
公開前はさほど話題になっていなかったようにも思うのですが?最後の最後で、シリーズ最高傑作が。恐怖も家族愛もすべてが極上で、“ただのホラー”の枠を超えた1本。過去作品のキャラクターの登場にも感慨深く…。そして、幾度となく経験しているはずなのに、今回は“違ったジャンプスケア”。タイミングを絶妙にズラして”攻撃”されたため、備えることが出来ずにモロに食らって死ぬかと思いましたww
作品データ
【製作年度】2025年
【製作国】イギリス/アメリカ
【上映時間】135分
【監督】マイケル・チャペス
【キャスト】
ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン ほか
あらすじ
実在した心霊研究家エド&ロレイン・ウォーレンの夫妻が体験した奇怪な事件の実話をもとに描いた人気ホラー「死霊館」シリーズの最終章。ウォーレン夫妻にとって最後の調査となった1986年ペンシルベニアでの事件を描く。「呪いの鏡」にまつわる謎の超常現象が次々と発生し、邪悪な存在は、ウォーレン夫妻の最愛の娘であり結婚を控えたジュディに狙いを定め、家族を引き裂こうとする(映画.comより)
年齢制限は?
PG12指定なので、12歳以下の方は保護者同伴が望ましいとされます。
どこで見れる?
10月17日(金)より劇場公開中
(※鑑賞時にご確認ください)
レビュー ( 2025・10・17 )
1、「死霊館」ユニバースのおさらい
実話ベースの“ガチ”ホラーシリーズ
『死霊館 最後の儀式』……シリーズ最高傑作でした。恐怖も感動も極上、まさか“家族愛”でここまで泣かされるとは…。
しかもこのシリーズ、ただのホラーではないんです。
実在した心霊研究家である、エド&ロレイン・ウォーレン夫妻の調査記録をもとに作られていて、“実話ベースのホラー”。
いわゆる「実話と言いつつ創作」みたいなホラー作品も多いですが、この夫妻は実在の人物。彼らの活動はWikipediaにも載っている、超・本物のオカルト研究者なのです。
オカルトを信じるかどうかは別として、ウォーレン夫妻が“本当に存在していた”という事実が、このシリーズに揺るぎないリアリティを与えているのは間違いありません。
本編ラインとスピンオフの関係整理
『死霊館』シリーズは、同じ“ウォーレン夫妻の世界(=死霊館ユニバース)”に属しながら、本編ラインとスピンオフラインに分かれています。
【本編ライン】ウォーレン夫妻が主人公
- 『死霊館』(2013)
- 『死霊館 エンフィールド事件』(2016)
- 『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021)
- 『死霊館 最後の儀式』(2025)
すべて夫妻が中心で、アナベル人形は“保管庫の呪物”として登場する程度。
【スピンオフライン】呪物・悪霊の単独シリーズ
- 『アナベル』3部作(人形の呪いの前日譚)
- 『シスター』シリーズ(悪魔ヴァラクの起源)
- 『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』(ラテン伝承を題材にした番外編)
『ヨローナ』はウォーレン夫妻とは直接関係しませんが、同じ時代・同じ超常世界線で起きた“別の事件”として描かれています。
実際、『アナベル 死霊館の人形』に登場する神父ペレスが再登場しており、ユニバース的にはゆるく繋がっていることが確認できます。
つまり、『最後の儀式』はアナベルやヴァラクの系譜と地続きの本編最終章。
これまで夫妻が向き合ってきた“外の恐怖”を越え、ついに“内なる儀式”へとたどり着く物語なのです。
ここからはシリーズの集大成として描かれた“最後の儀式”の恐怖と感動を、語っていきます。
2、「怖いのに泣ける」の傑作
予想を裏切る完成度、そして原点回帰
私がホラー映画監督で最も好きなジェームズ・ワンが手掛けている『インシディアス』と『死霊館』。どちらも大好きなシリーズです。
2年ほど前『インシディアス』が最終章を迎えた際は、やはり?劇場スルー。このシリーズがこんなにひっそり終わるなんて…!と寂しさを感じました(最終章なんてパトリック・ウィルソン自ら監督してるのに)
そんな経緯もあり、いよいよ『死霊館』シリーズもフィナーレを迎えると知ったとき、正直、少し不安でした。「また地味に終わってしまうのでは…?」
しかも、ジェームズ・ワンが“売れっ子”になって以降は、監督から離れ製作や脚本に回ることが多くなり、あのワン特有の緊張感とリズムが少しずつ薄れていた印象も。
特に、前作『死霊館のシスター 呪いの秘密』にいたっては、シリーズで1番「……(・ω・)」と。しかも、同監督がフィナーレを撮るということで(かなり)心配でもあったのです……
……が!!
蓋を開けてみたら、想像をはるかに上回る完成度に驚愕。まさかの、シリーズ最高傑作と断言できる出来でした。
今回、脚本にジェームズ・ワン含む4人もがクレジットされていたのは、こういうこと?だったのですね。
恐怖と家族愛のバランスが見事
久々に劇場で、こんなに心拍数が上がりっぱなしの2時間を過ごしました。恐怖描写のキレ味、リズム、音の使い方、そして“間”の取り方まで完璧。
ジャンプスケアも極上でしたが、「見えるか見えないか」の心理的な恐怖で押してくる、あのワン流の“間”と演出も戻ってきていました。
そして何より、恐怖だけじゃない。
毎回、さまざまな家族愛がテーマともなっている死霊館シリーズですが、今回は「新たな家族」も加わった“家族愛”が描かれています。
そしてお馴染み、ウォーレン夫妻の信頼と、成長した娘ジュディとの絆も。
記事の最後にまとめてあります
3、恐怖演出の職人芸
静の恐怖と、動の恐怖
これまでのホラー映画で見たことのあるような描写も、『死霊館』シリーズにかかるとワンランクもツーランクもクオリティが違う。
まず、出てくる幽霊の造形。どれもこれもB級な安っぽさなんて一切なし。“手抜きゼロ”の本気の怖さ。
そして、ジャンプスケアはホラー映画で幾度となく経験しているはずなのに、今回は“違った”んです。
たいていは「1、2、3…!」のリズムで来そう、となんとなく予測がついて身構えるじゃないですか。でも今回は、その“呼吸”を絶妙にズラしてくる。
「1、2…!」のタイミングでドーン!と来る。ヘタしたら、カウントゼロでもやって来るww
なので、2度ほど備えることが出来ずにモロに食らって、死ぬかと思いましたwww
私的「最恐」シーン
夜中に目を覚ましたある男性が、メガネをかけようとかけた“その瞬間”に「ドーン!!!」という一撃。
心臓バクバクというより、もはやバクバクも間に合わず!?バケモノと数秒見合ってしまいました…(・ω・)
…しかも、それからたいして間も空けずに、また「何か」が来そうな予兆があるわけですよ!
正直、まだ先ほどの傷が癒えていないので「…ちょ、もう!?…次食らったらマジで死ぬんじゃ…!?」と、スクリーンから目を逸らそうか、本気で考えました。
ここまでの感覚は、たぶん初めてだったかと…(疲)。
観客の慣れを完全に見透かして、一瞬の静寂を「罠」に変えるという。恐怖演出の職人芸とはまさにこのこと。
4、「鏡」が操る悪意
地縛霊ではなく、霊を操る“鏡の悪魔”
本作が特別なのは、恐怖の根源が“場所”や“怨霊”ではないという点。今回、すべての現象の中心にあるのは「鏡」。
そしてもちろん、本作のモチーフとなった“スマール家事件”は1980年代に実際に起きたとされる心霊現象で、夫妻の代表的なケースのひとつです。
物語の舞台は1986年、ペンシルベニア州。ウォーレン夫妻の娘・ジュディは成長し、婚約を控えるほど穏やかな日常を送っていた。
しかしところ変わって、「鏡」に脅かされている一家が。
ある出来事をきっかけに、導かれるようにジュディがその一家を訪ねることとなり、一家を救うためウォーレン夫妻が立ち上がる!
やがて鏡は、家族そのものを分断するほどの力を帯び、ついにはジュディを直接狙い始めるー。
鏡が映すのは、人の罪と恐怖
ここで重要なのは、この鏡が単なる「呪いのアイテム」ではなく、意志を持つ存在のように描かれていること。
ロレインの透視で見えた“三体の霊”も、あくまで鏡が映し出す“過去の断片”なのかもしれません。
それがどこまで実体を持つのか、あるいは悪魔の演出なのか、作中では明確に断言されないまま、恐怖だけがじわじわと増していく。
そして終盤、夫妻とジュディ、そして婚約者のトニーはこの鏡そのものと”物理的に”向き合うこととなります。
4、女性、母、そして斧を振る男
鏡と関連のある“3つの霊”ーー若い女性、その母親、斧を持つ男。
ロレインは「不倫した妻とその母を、斧を持った男性が殺害した」というビジョンを見ます。また彼らはただの亡霊ではなく、鏡に閉じ込められた過去の記憶のようにも。
夜中、父親がメガネをかけた瞬間に現れる“若い女性”は、おそらく斧男の妻であり、愛と裏切り、そして罪の象徴。
この三霊は、家族・暴力・怨念という人間の弱さを映す鏡そのもの。恐怖でありながら、どこか哀しさを帯びた存在たち。
彼らは怨むためでなく、忘れられた痛みを思い出させるために現れたようにも感じました。
しかし斧を持った夫に関しては、いわゆる幽霊という出方ではなく、ドッシリと歩きながらアクティブに出現するという、まさに犯行現場に直面しているような別の類の恐ろしさが!
これまでにもホラー映画で数々の人形は見てきましたが、「マミー、マミー」とおしゃべりしながら左右に顔を傾けハイハイする人形の怖さ…。
5、「愛」が恐怖を越えた夜
ジュディが継ぐ“ウォーレン家の使命”
これまでの『死霊館』シリーズでは、常にウォーレン夫妻が物語の中心にいました。しかし今作では、物語の焦点が娘・ジュディへと引き継がれます。
母親の遺伝により幼いころから霊感を持ち、両親の仕事を恐れと誇りの両方で見つめてきた彼女。
いまや婚約を控え、穏やかな日々を送る大人の女性として登場します。しかし、そんな日常を静かに侵食していくのが“呪いの鏡”でした。
この鏡がジュディを狙う理由は明白です。彼女の中には、ウォーレン夫妻と同じ“霊的感受性”が眠っている。それは悪霊にとって、最も強く、そして最も引き寄せられる光。
つまり、ジュディは“戦うべくして選ばれた存在”なのです。
新しい家族”トニー”
クライマックスでは、ウォーレン家3人と共に、恐怖に震えながらも逃げずに立ち向かうジュディの婚約者・トニー。
彼には、死と隣り合わせな究極の状況に直面し、警官を辞めたという過去があった。そんな彼は、恐怖を知らない勇気ではなく、恐怖を理解したうえで、隣に立つ勇気を見せてくれます。
浮いた鏡が、超高速回転する画なんてもう、心霊ものという枠をはるかに超えたバトルアクション。
そして、物理攻撃と言わんばかりの死闘を繰り広げた結果、恐怖よりも“信頼”が勝つ。血のつながりではなく、選び取られた家族の絆がそこに生まれたのです。
恐怖のど真ん中に”愛”を置いた作品
恐怖の連鎖を断ち切ったのは、祈りでも呪文でもなく、愛そのものでした。
悪魔を退ける力とは、特別な能力ではなく、誰かのために立ち向かおうとする“人の心”なのだと、改めて感じさせられます。
本作の“最後の儀式”とは、悪魔を封じるための儀式であると同時に、恐怖を通して、家族が増えたことー。
こんなに温かい終わり方を見せてくれるホラー映画は、なかなかありません。…恐怖のど真ん中に“愛”を置いた作品でした!
6、…まさかのドラマ化も!?
もっと見たかったウォーレン夫妻
ウォーレン夫妻の、安心感と誠実感がすごく好きで、2人をずっと見ていたかった…。
交際半年で結婚を申し込みたい彼氏と、夫妻のやり取りですでに泣けてましたしね…(;ω;)
エドとトニーが、自然な会話の中でしっかりと絆を深めていく過程も秀逸。あんな義父、理想ですね…。
パトリック・ウィルソン、改めて良い役者だなぁと。会話がなくても、あの繊細な「ほんのり笑顔」だけで、すべてを物語る。
そして、ベラ・ファーミガの、貴婦人なんだけれど芯のある強い女性像にも憧れ。
”良い夫婦”の見本のような2人がもう見られないなんて…。過去作、掘り返すしかないのか…
…なんて、思っていたら!?
アナベルとユニバースのこれから
『最後の儀式』でウォーレン夫妻の物語はいったん完結を迎えましたが、“死霊館ユニバース”そのものは、まだ終わっていないようで…?
アナベルを中心にしたスピンオフ第4弾の企画が水面下で動いているという噂もあり、ほかにも「呪物をテーマにした新シリーズ」や「次世代ウォーレン家(ジュディ世代)」への継承など、さまざまな方向性が検討されているようです!
さらに、HBO Maxでは『The Conjuring(仮題)』のドラマシリーズが開発中とも報じられており、ジェームズ・ワン率いる製作陣が引き続き関わる可能性もあるとのこと。
映画では描ききれなかった過去の事件や、夫妻の若き日の記録が描かれるかもしれません!
役者は変わってしまいそうですが?首を長くして待っておきます(・ω・)/
”エド”が、まさかのオヤジ狩りに!?R15の問題作
笑顔の奥に潜む悪意!静かな恐怖が心を侵す…