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映画【ガーゴイル】恋したら喰われます。おしゃれ風フレンチホラー【ネタバレ】

オシャレな恋愛映画だと思って鑑賞すると、気づいたときには取り返しのつかない場所に連れていかれます…。本作『ガーゴイル』は、いわゆるホラー映画というより、ドラマの中にたまたまとんでもないシーンがぶち込まれた作品(・ω・)オシャレ、官能、アート寄り。そんな顔に騙されると普通にダメージを受ける、「恋したら喰われる」フレンチホラーです。

作品データ

【製作年度】2001年
【製作国】フランス/日本
【上映時間】100分
【監督】クレール・ドニ
【キャスト】ヴィンセント・ギャロ
ベアトリス・ダル ほか

あらすじ

パリを訪れた科学者シェーンと新妻ジューン。一見ただのハネムーンに見えるこの旅には、ある目的が。シェーンは「”行為中”に相手を噛み殺したい衝動」に襲われる奇病を抱えていた。彼はかつての研究仲間レオを訪ね、同じ病にかかった女性”コレ”と再会する。コレはすでに殺人を犯し、レオに監禁されながら生きていたのだった。

年齢制限は?

R15指定なので、15歳以下の方は鑑賞できません。

どこで見れる?

現在、サブスクでの配信はなし。
2026年1月30日(金)より、新宿ピカデリーほか全国劇場で4Kレストア版が公開。

※配信・レンタル状況は 記事作成時 のものになります。鑑賞時にご確認ください。

レビュー (2013・03・03の記事に加筆)

1、なぜ今、レストア版が上映に?

20年前の女性監督によるトンデモホラー!

ここ最近、ホラー映画を見ていて思うのですが、女性監督によるホラー作品がやたらと増えてきていませんか?

たとえば、『チタン(21)』『ハッチングー孵化ー(22)』『サブスタンス(24)』など。

すべてジャンル的にはホラーですが、いわゆるハリウッド的な「ビックリさせて終わり」という作りではなく、身体・欲望・生々しさを真正面から突きつけてくるタイプ

…そしてここへ来て。
やはり女性監督の『ガーゴイル(01)』4Kレストア版が、2026年1月30日(金)より上映されることが決定。

問題作ハンターでもある私が本作を鑑賞したのは2013年のこと。ゲオの宅配にてレンタルしました(※現在もサブスクでは配信されていません)。

あらすじこそヤバそうだけれど、ヴィンセント・ギャロもオシャレ俳優みたいな立ち位置だったし、このジャケットからしてもここまでのトンデモない描写があるとは思わなかったんですよね(・ω・)

当時はまだ、早すぎた…!?

正直、20年以上も前にこの作品は早すぎたのかもしれません。

ドラマ映画やただのアート映画として観るにはグロすぎるシーンがあり…。

かといって、いわゆるホラー映画として売るにもターゲット層が微妙にズレてしまい、結果、「立ち位置がよく分からないキワモノ映画」という扱いを受けてしまったようにも。

しかし今なら、「説明しない映画」「観客に丸投げする映画」が当たり前に受け入れられる時代。

ましてや『サブスタンス』の大注目により、(ある意味)ボディホラーでもある本作が4Kレストア版という形で掘り起こされたのかと。

ただ『サブスタンス』のような笑える突き抜けたグロではなく、指先から身体中の力が抜けるような、かなり現実的で生々しいグロさ…

この記事では、旧ブログでのレビューを基に、加筆したものをお届けしたいと思います。

2、あらすじと登場人物

新婚旅行から始まる物語

シェーンとジューンは新婚旅行でパリを訪れ、ホテルで過ごしながら街を歩き、ごく普通のカップルのような時間を過ごしています。

しかしシェーンはジューンを抱こうとはしない…。
なぜなら彼は、愛する行為の途中で相手を食い殺してしまうという病を抱えていたから-。

研究者で、過去にどうやらある実験に関わっていたシェーン。

そんな彼が新婚旅行でパリに来たのは、研究者の同僚だったレオに会い、自身の病について探り出すことだった。

もう1人の“同じ病”を抱えた女性”コレ”

物語はシェーン夫婦と並行して、もう1人の人物を映し出します。

それが、レオの妻である”コレ”。彼女もまた、ある実験によりシェーンと同じ病を抱えていた。

しかし彼女はシェーンよりも症状が重く、外へ出すと誰かれかまわず行為に及び相手を殺してしまうため、レオが監禁しているのだった。

この映画は、「なぜそんなことになるのか」「どうすれば治るのか」などの説明はほぼありません。ただ、そうなってしまった人間がいるという事実だけを突きつけてきます。

ちなみに邦題の『ガーゴイル』とは「怪物」の意味。

原題は一見アホっぽいが…

原題はなんと『Trouble Every Day』で、直訳すると「毎日のトラブル」と日本の英字Tシャツにありそうなダサさですが(・ω・)この症状が「特別な事件」ではなく「今日もまた出ちゃった」系のトラブル止まりなのが、逆に恐ろしいという見方も。邦題の『ガーゴイル』はかなり盛ってますね。

3、食い殺し描写の異常さがキツい…

ゾンビより怖いのは「人間のまま」なところ

この映画の何がいちばんキツいかというと、描写そのもののグロさ以上に、”加害者がずっと人間のまま”なこと

ゾンビ映画なら、「もう人じゃないから」という非現実的な心の逃げ道がありますが、『ガーゴイル』にはそれがない。

目の前にいるのは、さっきまで普通に会話していた人。感情もあるし、戸惑いもあるし、何ならちょっと優しそうにすら見える。

それが突然、説明も前振りもなく、人を食い始める。この落差が、ホラーとしてではなく、生理的にキツいんですよね。

しかもそれは、あくまで感情が高ぶってしまったが故の行為という描き方なので、”貪る”という表現が近いかもしれません。

特にヤバい、”コレ”のトラウマシーン

特に“コレ”が、若い青年を食い殺すシーンは、見たことのないような類いの衝撃…。

行為がはじまり、コレの息づかいが徐々に荒くなってくるのですが、青年も徐々に違和感を感じ始め、

『(…え、これっていわゆるそういう興奮じゃなくね…!?)』と怯え始めていると、彼の顎に噛み付こうとするコレ。

…そしてついに、首や唇などあらゆるところを食いちぎり始める(!!)

顔を血まみれにしながら、まるでペットを愛でるかのように青年に頬ずりしたり『…ふぅ~ん』とペロペロする様は、もはや人間の理性など微塵も感じられない。

獲物を捕食するケモノでした…。

またいかにもな血糊でなく、ドス黒くとろみがある血にも力が抜け…(;ω;)ヤメテ…。
個人的にかなりのトラウマシーンで、今でもしっかりと覚えています…。


気になる方はこちらで鑑賞できます◎

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4、なぜ「行為」からの食い殺しなのか

「行為」は愛ではなく「距離ゼロ」の装置

まず大前提として、この映画における”行為”は、ロマンチックな意味での「愛情表現」ではありません。

誰かと深く心を通わせる行為というよりも、人と人の物理的な距離が限界まで近づく行為として描かれています。

肌に触れる、匂いを感じる、体温を共有する…相手が完全に無防備になる瞬間。

なので相手は、愛する人である必要はなく、むしろ愛していない相手のほうが都合がいい場合すらあります。欲情のゴールではなく、衝動が暴走するための引き金にすぎません。

「食べる」まで行ってしまう、人間の衝動

ではなぜ、ただ殺すのではなく「食い殺す」という行為にまで至ってしまうのかー。
ここで重要なのが、「口」というモチーフ。

触れる、キスをする、噛む。

これらはすべて、相手との境界をなくそうとする行為。『ガーゴイル』では、その境界が一線を越えてしまいます。

近づき、口にし、そして取り込む…。

これは性欲の表現ではありません。むしろ、近づきすぎた結果として壊れてしまう衝動

愛したい、近づきたい、つながりたいという欲望が制御できなくなったとき、最終的に「破壊」という形で表に出てしまう。

なのでこの映画の食い殺しは、快楽的でも、興奮を煽るものでもなく、ただひたすら不快で、生々しいんですよね…。

当時は、グロさばかりがトラウマとなり「一体何が言いたい映画なの…」と思うしかなかったのですが。

いま考えてみると、本作が描いているのは、愛と暴力が分離できなくなった人間の姿であり、その危うさを極端な形で見せたのかな…とも。

5、日本版ジャケットは詐欺…?

”被害者”が出そうな日本版ジャケット

ただ、本作の日本版ジャケットが、ですね…。

どう見ても、ちょっと背伸びした大人向け恋愛映画。もしくは、官能寄りのアート作品。
少なくとも、「人を食い殺す映画です」なんて雰囲気は1ミリもありません。

ましてや主演のヴィンセント・ギャロは、当時『バッファロー’66(98)』により、オシャレ映画のイメージも強かった俳優。

グロ耐性ゼロの、ギャロファンたちが手に取ってしまっていても不思議ではなく、こんな描写があるとは知らずに観てしまった人の精神的ダメージは計り知れませんw

カンヌ映画祭では「2名の女性が失神した」と同時に、スタンディングオベーションの嵐でもあったそうで?作品の内容に相応しい混沌ぶり…。

また、あのアニエス・ bが作品を支援したそうで『アニエス・bに捧ぐ』なんてテロップも出てきましたが。

海外版はちゃんと「警告」してくれている

一方で、海外版のジャケットを見ると、だいぶ印象が変わります。
血まみれの女性のあまりに不穏な佇まいは、「普通の話ではない感」がきちんと出てますw

少なくとも、うっかり恋愛映画だと思って観るという事故は起きにくい。

この差を見ると、日本版がいかに“優しすぎる顔”をしているかが分かります。優しいというか、正確に言うと事実を伏せすぎです。(ちなみにリマスター版のジャケットも同じ)

日本版ジャケットを一方的に責められない…

ただこの映画、冒頭でも言ったようにいわゆるホラーとして売るのも誤解されそうなんです。

  • エンタメではなく、アート寄り
  • 恐怖描写を狙って打ち出しているわけではない
  • ドラマそのものは地味で、伏線回収もしない

でも、描写だけは異様に生々しい。

なので、ホラーとしても、恋愛映画としても、どちらにも振り切れず、「よく分からないけどオシャレそう」という顔をさせるしかなかったのでしょうね(・ω・)

ただ、今となっては、『屋敷女』のベアトリス・ダルが出演していることからも、ホラー映画好きの方なら何らか察することはできそうです…笑。(『屋敷女』は『ガーゴイル』の6年後です)

6、この映画が向いている/いない人

まず、向いていない人。

  • スカッとしたオチが欲しい
  • ホラーは怖がらせてくれればOK
  • 理由や設定をちゃんと知りたい
  • 後味の悪さが苦手

このタイプの方は、たぶん途中で嫌になります…。

逆に、向いている人

  • 意味が分からなくてもOK
  • 説明されない映画が好き
  • 変な余韻が残る作品に弱い
  • グロ耐性がある(最重要)

いわゆる万人向けではない映画が好きな人には刺さるかもしれないので、気になる方はレストア版を観に行ってはいかがでしょうか。

レストア版を鑑賞できる環境にないけれど気になる!という方は、こちらからゲオ宅配にて鑑賞できます。

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