
胸くそ映画ハンターの私はもちろん劇場へ足を運んだのですが。なにこれ、なにこれ、なんなんコレ……。あまりの破壊力に心がもげました(・ω・)あの『バイオレンス・レイク』以来の衝撃…”ここ10年でもトップクラスの“胸くそ案件”。これまでに4,000本近くの作品を観てきた私ですが、劇場で観たことを本気で後悔した作品は『胸騒ぎ』が初めて…。
作品データ
【製作年度】2022年
【製作国】デンマーク/オランダ
【上映時間】97分
【監督】クリスチャン・タフドルップ
【キャスト】モルテン・ブリアン
スィセル・スィーム・コク ほか
あらすじ
イタリアでの休暇中に親しくなったオランダ人夫婦の自宅に招待されたデンマーク人夫婦が、彼らと会話をする中で言いようのない違和感を抱き、さらに独特な歓待を気味悪く感じるが、週末まで耐えようと考える。(シネマトゥデイより)
年齢制限は?
PG12指定なので、12歳以下の方は保護者同伴が望ましいとされます。
これ、かなり驚きなんですが本当にPG12なんですよね…?(未だによく分からないこの基準…)。どう考えても、R15でもなくR18が妥当なのではないかと…。大人でも耐性がないとかなりキツいですし、これまでにまぁまぁヤバい作品を見てきた私でも、本作のラストには耐えられませんでした…。
どこで見れる?
見放題 | 課金 | |
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Amazon プライム | ー | ー |
U-NEXT | ー | ● |
Netflix | ー | ー |
hulu | ー | ● |
Disney+ | ー | ー |
ゲオ宅配 レンタル | ー | ● |
レビュー ( 2024・05・11 )
1、近年、稀に見る胸くそ…
なんと言ってもヨーロッパ映画ですし、これはハリウッドにはない類いのイヤ〜なものを見せてくれるのだろうと期待していたのですが…。このときばかりは、初めて?というほど後悔しました…(;ω;)
これまでに4000本近い作品を見てきた私ですが、どんなに酷い作品を見ても、見なければ良かったと後悔したことはほぼないんですよね(配信ならすぐやめてしまうし笑)。
ただ今回、何が本当に無理だったのかというと『子供』です…。
子供を含む家族が、酷い目に遭う作品というと『ファニーゲーム』や『ミスト』がよく挙がりますが、それでもこんな気持ちにはならなかったし、もしかしたらここまでのものって見たことがなかったかもしれません…。
確かに描写はとても丁寧で生々しく、作品の完成度は非常に高いです。私もラスト10分までは面白く?見ていました。
しかし、問題はオチ…。これが色んな意味で、あまりに酷すぎて…。
監督のしたり顔が浮かぶので、高い評価はつけなくないんだよなぁ…笑
監督は俳優業もしており、なんとマッツ・ミケルセン主演の『アフター・ウェディング(06)』に出演していたんだとか!…顔を見たけれど、覚えてないなぁ。
2、地獄のバカンスのはじまり
人ゴトとは思えない”日本人”

本作の何がリアルって…似たようなことは大なり小なり、誰しもが必ず経験したことがあるからなんです。
例えば普通に生活をしていて、何かのシーンで少し居心地が悪いなぁと感じることがあっても、相手にそれを直接言うことはまずないですよね…?相手を傷つけずに、しかしそれなりの意思表示をして状況を打破しようと考えるはずです。
ただ、これが上手に出来ない人もいるー。次こそはなんとか伝えねば…と思いつつも、ズルズルと相手のペースにハマり、抜け出せなくなってしまう。
本作はそういった、かなり身近な恐ろしさを描いているのです。しかも、2家族にはお互い小さな子供もいる。
特に断ることが苦手な国民性でもある日本人からすると、かなり共感できるものがあると思います。
少しずつ”侵食”されていく家族

デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ+娘のアウネスは、旅先でオランダ人夫婦のパトリックとカリン+息子のアーベルと出会い意気投合。
旅行から戻るとパトリックから『家へ遊びに来ないか』と誘われ、一家でオランダへと赴くが、徐々に不穏な空気になっていくのだった…。
最初の違和感は、パトリック家に着いてわりとすぐ…。ルイーセはベジタリアンだと伝えているにも関わらず、パトリックはなぜか肉を勧めてくるのです。
そして、これを断ると明らかに空気が悪くなりそうな状況を作ってきます。これがまた意図しているのか天然なのか、絶妙な空気感で。
ほかにも、ルイーセがシャワーを浴びているのにパトリックがすぐそこまで来ていたり、アウネスが床で寝ることとなったり、行きたくもなかった居酒屋では目の前でイチャつかれ、会計まで支払わされる…。
ビャアンとルイーセのストレスはどんどん溜まっていき、ようやく疑惑が確信へと変わった時には、すでに時遅し…。
※ここから先はネタバレします。
未見の方は、こちらから視聴できます◎
記事の最後にまとめてあります
3、そこまで行く!?”最悪”の結末

((C)2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures)
…それにしても、一体なんだってこんなことにまでなってしまったのか…(!?)
逃げられるタイミングは、確実に何度かあった。それなのにビャアン一家は、結局は自分たちの意思で『蟻地獄』へと戻って行ってしまう…。
妻のルイーセはまだハッキリと物が言えるキャラクターでしたが、夫のビャアンがなんともお人好しで、頼りなくて…。パトリックにストレス発散法を教わって、心開いてる場合じゃねぇよ…(;ω;)
…でも、やっぱりオチ…。子供だけはない…いや、マジでない…。
夫婦の目の前で、子供を奪われるどころか…突然、子供の舌を切られるって…………。
一瞬、私も何が起きたのか分からず、映像の意味を理解するのに時間がかかりました………『…え、どういうこと…?』
実は旅行先で、アーベルは舌がない病気だということが明かされていました(ジャケットの男の子です)。これは夫婦に何か関係していそうだな…とは思ったのですが、まさか、コレだったとは…。
情報が与えられない腹立たしさ
本作がどうしても納得いかない理由のひとつは”子供”。
そしてもう1つは、一家がここまでされる理由がほぼ明かされずに、終わること。
作中で明確な「犯行の目的」や「計画の背景」は説明されません。
子供を奪われたビャアン夫婦は、その後抵抗も出来ず、言われるがまま全裸にさせられ…。抱き合い泣く2人に、絶命するまで大きな石をぶつけるパトリック夫妻。
あまりに理不尽で凄惨なラストを迎えるのに、パトリックたちの動機どころか情報すらほとんど与えられない腹立たしさ。
4、夫婦の目的は支配と快楽?
最初は”人身売買”かと思ったが…
衝撃だったは、“彼らの子ども”として紹介されたアーベルも、実は他の家族からさらわれてきた子どもだったこと。
最初は子どもの人身売買かとも思ったのですが、アーベルも結局殺されてしまいます。
アウネスだって、あのあとしばらくしたら殺されて、パトリック夫婦はまた新たなターゲットを見つけるのでしょう。
彼らが子どもの舌を切っていることに関しては「反抗も発言も許さない完全な支配下の存在」そのもので、この夫婦が求めていたのは──
“完全にコントロールできる人間たち”だったのではないでしょうか?
わざと怒らせてくる“審査タイム”
作中では、夫婦がビャアン夫妻に対して、わざと怒らせるような話題や、不快感を与えてくる場面が多く登場します。
最初はただの失礼な人たちかと思って見ていたのですが、後から振り返ると、それも「試していた」ようにも思えます。
たとえば──
- 食べられないと分かっている物をあえて勧めてくる
- シャワーを浴びているすぐ側までやってくる
- デリケートな話題に無遠慮に踏み込む態度
など、“夫婦がどこまで耐えられるか”を測っているようなやりとりが続きます。
その反応ひとつひとつが、彼らのジャッジ対象になっていたのかもしれません。
”断れない家族”には制裁をー
そして──ラストで無抵抗に“終わり”を受け入れる夫婦の姿を見て、ゾッとしました…。
「これ、最初から最後まで全部仕組まれてたのかもしれない」
彼ら夫婦は、「どこまで壊れていくのか」「いつ心が折れるのか」その過程そのものを観察し、楽しんでいたのではないでしょうか。
断れない・逆らえない家族を選んで、支配し、崩れていく様子を楽しむ──それこそが彼らの“遊び”だったのかもしれません。
そして同時に「断れないこと=弱さ」であるという、冷酷なメッセージでもあるのです。

パトリックの家の部屋に貼ってあった、おびただしい数の見知らぬ家族写真。彼らがこれまでに、同じような犯行を重ねて来たことが分かります。
そして、写真の彼らもまた「断れなかった家族」たち。
5、逃げられない!心理トリック

また本作では、これまでの胸くそ映画ではあまり見られなかった、主人公たちの行動がー。
それは、「逃げなかった」のではなく「逃げないように仕組まれていた」こと。
→「自分の意思でここに残っている」と錯覚
- 明らかに不穏なのに「大したことないのかも…」と思わせる”間合い”
- 食事や子供たちの交流など、“和やかさ”を混ぜる演出
- あのまま帰れたのに「今夜も泊まっていけば?」に応じる
→「判断の責任」をグラつかせる
逃げるという選択をできなかったのではなく、「しなかった自分が悪い」と思わせる構図を作っている。
結果的に、被害者は自ら選んで破滅に向かっているようにも見えるし、一方で私たち観客も「でも…あれって本当に逃げられたのか…??」と、自信を失っていく。
被害者の自己判断力・罪悪感・混乱を極限まで引き出すことで、支配下に置いたまま、逃げ出す力を奪っていく。
私たちも心の中で「…早く逃げろ!」と叫びながら、どこかで“彼らの選択”を信じてしまっていたのではないでしょうか…。
6、どうすれば助かったのか?
逃げられるタイミングは幾度もあった。
この異常な状況下で、彼らに残されていた唯一の“正解”は──
「もう一泊していけば…?」という誘いを断って帰ること。
もはや、これしかありません笑。
あるいはその直前の、満場一致の『(…ぬいぐるみなんかどうでもいいだろ…!)』のタイミングで帰宅。
しかしビャアン夫婦の「まだ(決定的な)怪しいことは起きてないし…」といった“警戒心のなさ”の積み重ねが、命取りになるように仕組まれていたのです。
従っていれば、助かった可能性はあったか?
ある意味、パトリック夫妻に完璧に従えば”ワンチャン”逃げ切れた可能性もあったかもしれません。
彼らは「空気の乱れ」や「態度の変化」に非常に敏感。
ビャアンー家がそれらを一切見せず、全力で演じ切っていれば見逃されたかも?
しかし──
- その“合格ライン”は一切明かされない
- その日の気分や、ふとした口調・態度がNGになる可能性がある
- 家族全員が完璧に“演技”できるかは、ほぼ不可能に近い
つまり、これは“気分で変動する無理ゲー”なんです(・ω・)
それ以前に、パトリック夫妻は確実にターゲットが壊れるまで「やり切る」ので、そもそもコレは成立しないですね…。
結論:夫婦に目をつけられた時点で、詰んでいた。
7、何はともあれ”地獄映画”認定
そうして訪れる、映画史に残る(かもしれない)史上最悪のラスト。
本作を観ていない方からすると、
「……一体、なぜ夫婦は抵抗しないの??」と疑問に思うかもしれません。
しかし、見ている私たちには残念ながら、それが分かってしまいます。
その先にあるのは、絶叫ではなく「これはもはや抗うことすら想定されていなかったんだな…」と悟らされるような、静かな地獄。
ラストの光景を見て、自分が”ただの観客”でいられなくなったのなら、あなたも完全にこの物語に取り込まれています。
私も、見事に心がもげました…(・ω・)
…ああでも、これが監督の狙いで意図するところなんだろうし、褒め言葉になってしまうんだろうな…。実際、世の胸くそ好きの方々のレビューを見ると「久々に凄い」と高評価が多いです。
最近、見たいホラーは見尽くしてしまったなぁなんて言っていたので、私に罰が下ったのかもしれません…。
見終わって半日ほど経っても鬱気味で、映画の後に買い物する予定が、とてもそんな気になれずに帰宅。こんな気持ちになるホラーは、当分出てきそうもないです…。
ハリウッドでのリメイク作も!

『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』と、オリジナルの原題に副題がプラスされたリメイク作は、パトリック役にジェームズ・マカヴォイ。
私は未見なのですが、どうやらオリジナルとはまた違った面白さがあるようです。
そして監督はなんと、私が冒頭で話した『バイオレンス・レイク』のジェームズ・ワトキンスが務めていますw ちなみに『バイオレンス・レイク』も相当しんどく、2度と見たくない作品の1本です…。
『バイオレンス・レイク』はウツ・胸くそ映画「スリラー編」で紹介しています。


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