
こんな設定、もう面白くなるしかないと思うんですけどね(・ω・)謎が解けそうで解けず、面白くなりそうでならないという、なんとも絶妙なライン。意識高い系とも、考察系とも言えそうな…。旅館の青年の話などは興味深かったのに、物語の本筋にはイマイチ絡んでこず。面白くなりそうな余地をかなり残したまま終わってしまったのが、勿体無く感じてしまいました…。※途中からネタバレします(表記あり)。
作品データ
【製作年度】2025年
【製作国】日本
【上映時間】104分
【監督】近藤亮太
【キャスト】杉田雷麟、平井亜門
森田想 ほか
解説・あらすじ
第2回日本ホラー大賞で大賞を受賞した短編を自ら長編化し、記念すべき長編映画監督デビューを飾ったホラー・サスペンス。幼い頃に、山で弟の日向を見失い、そのまま行方不明になってしまうという辛い過去を持つ敬太。今は失踪した人間を探すボランティア活動をしている彼のもとにある日、母親から古いビデオテープが送られてくる。そこには日向がいなくなる瞬間が映っていた。(allcinemaより)
年齢制限は?
年齢制限はないので、どなたもご覧になれます。
どこで見れる?
見放題 | 課金 | |
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Amazon プライム | ー | ● |
U-NEXT | ー | ● |
Netflix | ー | ー |
hulu | ー | ー |
Disney+ | ー | ー |
ゲオ宅配 レンタル | ー | ー |
レビュー ( 2025・01・24 )
1、実は話題の知られざるホラー

『第2回日本ホラー大賞』で大賞を受賞した短編を、監督自身が長編化した本作。ちなみに第1回の受賞作は『みなに幸あれ』です。
そして、この事実を知ってか知らずか—
私が鑑賞した回では、なんと1席残らず完全なる満席!
こんなこと、これまで1度も経験がありませんでした。
確かに上映館も限られていますが、ホラーはそもそも人を選ぶジャンル。ましてやマイナーなホラー作品ともなれば、自分を含め数人の観客しかいないこともざらです。
監督もキャストもまだ広くは知られていない中で、これだけ注目されているのはホラー好きとしては本当に嬉しい光景でした。客層は年配の方が多め、また女性の1人客も目立ちました。
事前評判も良く、さらに満席ということで、期待値はぐんぐん高まったのですが……。
うーん、これはとても惜しい…(;ω;)モチーフや設定自体は素晴らしいのに…。
絶賛や『怖い』という感想も多く見受けられますが、このタイプのホラーで巷での高評価はなかなかすごいですよね!
いわゆるエンタメ寄りではなく、むしろマニア向けな雰囲気だったので、正直ここまでだとは予想していませんでした。

入場者特典として配布されたのは、なんとしっかりと製本された冊子!中には『近畿地方のある場所について』の”背筋”さんによる、書き下ろし短編小説『未必の故意』が収録されています。
『近畿地方のある場所について』は『サユリ』の白石晃士監督が映画化。8月公開ということで今からとても楽しみです。
2、さっくりあらすじ
山の中の廃墟で一緒にかくれんぼをしたまま、5歳の弟・日向が行方不明になるというトラウマを抱える敬太。
この出来事から年月が経ち、今では失踪者を探すボランティア活動に従事。失踪者を追い求めることの真意と、身内の失踪というものがどれほど人間の心に深い影響を与えるのかを考えさせられます。
そんなある日、母親から1本の古びたビデオテープが送られてくる。その内容は、単なる過去の記録としては片付けられないほど不気味であり、なんと、日向が姿を消すその瞬間が映っていたのだったー。
ビデオテープに何か重要な真実が隠されているのではないかと感じた敬太の過去が、再び動き出す。
日向はなぜ消えたのか…。
次第に明らかになっていく、見失われた弟と家族の間に隠された秘密。
過去と現在が交錯し、ビデオテープがもたらす新たな事実の影響は、彼を思いもよらぬ方向へと導いていきます。
敬太の心の葛藤を描きながら、失踪事件の謎を追うサスペンス要素、そして静かなジャパニーズホラーとしての様相を見せながらも、物語は展開していくのですが…。
※ここから先は完全にネタバレします。
『先に本編を見たいかも…』という方はU-NEXTの無料お試しですぐに視聴できます!
記事の最後にまとめてあります
3、なぜ勿体ないと思ったか
意識高い系とも、考察系とも言える

(C)2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
こんなの、あらすじだけを見たら、もう面白くなるしかないじゃないですか(・ω・)
それなのに、謎が解けそうで解けず、面白くなりそうでならない…。 かといって『つまらない』とも言い切れない。かなりモヤモヤする不思議な感覚でした…。
たとえば、私は「映像から失踪の手がかりを紐解く展開」を期待していたのですが。そういうわけではなく、ここではあくまで『弟が映っていた』という事実だけなのですね…。
本作はいわゆる、意識高い系や考察系でもあるので、描かれていない余白を楽しむことができる方なら、かなりハマるのかもしれません。
全体的には静かでスローテンポ
全体的にはスローテンポで、特に前半1時間はほぼ大きな展開なし。
派手な演出も控えめで、体調によっては眠くなってしまう方もいるかもしれません。
とはいえ、描写自体はとても丁寧。
過剰な演出がないぶん、Jホラー特有の陰鬱でジメっとした空気感はしっかり出ています。怖いシーンもピンポイントで刺さるものがありました。
だからこそ…
『面白くなりそうな要素をかなり残したまま、終わってしまった』ことが本当に惜しかったです。
最近のホラーやサスペンスでは、謎を解き明かさないまま終わるスタイルも増えています。
パンデミック系作品などでは、そもそも『なぜそんな現象が起きたのか』に触れないのが主流ですらあります。
それでも本作では、
・物語のキーになりそうな伏線
・解き明かしてほしい謎
がいくつも存在していたのに、そこに触れずに終わってしまう—。
しかも、それらの謎がとても興味をそそる内容だっただけに、本当に勿体ないなと感じました。

ある動画サイトで知ったのですが、近藤亮太監督は『霊的ボリシェヴィキ』でも脚本・編集・助監督・合成などを手掛けていたそうです。
実は私、この作品がかなり好きで。
特に「映像を用いず、キャストの語りだけで恐怖を描く」シーンがは本当に怖いです!
監督自身も、『ミッシング〜』の旅館での青年のシーンに『霊的ボリシェヴィキ』の「想像させる怖さ」を活かしていると語っていました。
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』が刺さった方は、ぜひ『霊的ボリシェヴィキ』もチェックしてみてください!
4、母からのVHSに込められたもの
敬太が母親から受け取るビデオテープも、本作の重要な謎のひとつです。
なぜ、あのタイミングでテープが送られてきたのか?
テープには、過去の家族の姿、幼い頃の敬太と日向の映像が収められていました。
敬太の母は、物語の中盤で自害してしまうのですが、これについてははっきりとは語られません。
ビデオテープの存在は、『記憶の中の母』と『現実の母』の間にあった深い断絶を、静かに突きつけているようにも感じました。
5、山に関する謎はとても興味深い
旅館の青年のエピソード単体ならとても面白い

(C)2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
敬太と司は、弟が失踪した山の廃墟へ向かいます。(パートナーではなくて同居人なんですよね…?最近ポリコレが多いからポリコレ脳になってます)
この山では、過去にも奇妙な出来事が多発していました。
- 行方不明者や集団自殺など不可解な事件がいくつも起きていた。
- 行方不明になった大学生たちが残したカセットテープには、彼らの失踪前の様子が録音されていた。
- 山の麓の旅館の青年は、祖母から『山には行ってならないと言われていたが、大人たちは子供が寝てから山へ行っていた』という話を聞いたことがある。
なかでも長回しで語られる、旅館の青年が語る祖母のエピソードがかなり怖いです。決して話が上手いというわけではない、極上の素人感がとんでもなくリアルで、いやこれ実話だろ…となります(・ω・)
さらに大人たちは山を『仏や神様を捨てる場所』だとしていたそう。一見するとなんのことだろう?とも思うのですが、『信仰を捨てる』という言葉には、“救いを拒絶する”という重い意味が隠れているようにも感じました。
もしこの村が、絶望を抱えた末に神仏すら遠ざける道を選んだのだとすれば、この山が呪われた存在になった背景にも、なんとなく筋が通る気がします。
ちなみに祖母は、初潮が来たときに村で噂されるのを嫌がり、汚れた下着をこの山に捨てに来たんだそう…。
以来生理が来なくなったらしいのですが、だとしたら自分は一体誰の子なんだ(?)ということで、そのことを深く考えないようにした、と青年。
このエピソード単体ならばとても怖いし、興味深いです。こんな話、どこかに本当にありそうじゃないですか…(!?)
また、大学生グループが失踪直前に残したカセットテープの存在や、山を探索する者たちが必ずしも辿り着けるとは限らないという不条理さも、この山そのものが『普通の理屈では説明できない異界』であることを強く印象づけます。
山に巣食う”何か”に誘われた?

彼女の上司役には、なぜか藤井隆。
(C)2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
そして新聞記者の久住も、同様に山での謎を追うことになり、ラストでは司と廃墟へ。…そういえば、廃虚はなかなか見つからないと言っていたはずなのですが?敬太たちは迷うことなく、わりとあっさり行っていたような…。
まぁ普通に考えれば、そんな簡単に見つかるものではないはずですが、もしかすると山に巣食う何かが、彼らを廃墟へと“誘った”とも考えられます。そう思うと、あのスムーズさにも不気味な理由があるのかもしれません。
また、霊力があるという司の設定が、あまり活かされなかったような気がしないでも…。
ただこちらも、もしかするとこの山自体が、普通の霊感では到底感知できないほど異質な場所だったのかもしれませんし、司の力が無力化されることで、山の恐ろしさがより際立っていたようにも思えます。
6、独立したエピソードたち

ただ、先ほど挙げた山でのいくつかの謎が話の本筋にイマイチ絡んできません。コレはコレ、ソレはソレみたいに、独立したエピソードのようになってしまっているんです。
せっかくこんなにたくさんのお膳立てがありながら?これらのエピソードが物語の核心に直結するわけではなく、『謎は謎のまま放置される』スタイルが本作の特徴でもあるんですよね。
廃虚では、失踪した弟が着ていたジャンパーだけが落ちており、それを抱きしめ咽び泣く敬太…。
ジャンパーだけが残されていたことには、異様な怖さがありました。まるで“肉体すら呑み込まれる世界”であることを示しているかのように。敬太にとっては弟との『思い出』だけが現実に取り残された、そんな絶望を象徴しているようにも思えます。
司も、弟は亡くなっていると思うと言い、やはりそれは間違いないようですが、弟の生死について明確な描写はありません。
廃墟で、久住を掴んだ腕は誰…?
『腕を掴む手』は一瞬ギョッとしたのですが、不思議と恐ろしいとかイヤな感じがあまりしなかったんですよね。
手の主ははっきりとは描かれていませんが、もしかすると、すでに山に囚われた司が、久住に警告を送っていたのかもしれません。
越えてはいけない一線を、あの手で止めようとしていたのだと考えると、切なさと恐ろしさが交錯してきます。
そして、それから3ヶ月…。司は行方不明になっており、物語はエンディングを迎えます。
本作は仰々しい音の演出などで驚かせる、いわゆるジャンプスケアを封印したということでも評価されていますが、腕のシーンは本当に不意打ちすぎてビックリしました!音がないことが、逆にこんなにも生々しいということを初めて知りました…。
7、『何も解決しない』ことがテーマ?
弟、司、母、そしてかつての失踪者たち。
この作品では、『消えること』『残された者が感じる断絶』が繰り返し描かれます。
誰もはっきりとした答えを持たないまま、ただ時間だけが過ぎていく。山という異界の存在が、人間関係や精神の崩壊を加速させているようにも見えます。
もしかしたら本作は、
『怪異そのものより、怪異に対して人がどう壊れていくか』を描きたかったのかもしれません。
もう少し謎を知りたかったしモヤっとする部分も多いのですが、細かな伏線も張られていそうで、観る側にさまざまな解釈を委ねる作りとなっています。
個人的には、2度目、3度目と鑑賞することで新たなヒントが見つかるタイプの作品だと感じました。
『何も解決しない』ことそのものがテーマなのかもしれません。
『飯沼一家に謝罪します』の匂わせ加減は絶妙だった
本作を見た後に、同じく近藤亮太監督が演出に携わった話題のモキュメンタリー『飯沼一家に謝罪します』を鑑賞したのですが。
確かに『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』と似た感触もありました。
『飯沼一家に謝罪します』と同じ、TXQ FICTIONシリーズの『イシナガキクエを探しています』も見たのですが、このシリーズは見る者に対する匂わせ加減と余韻がとてもスマート。
両作品とも、必要以上には語らないのですが、最低限の『情報』は見る者に与えてくれるんです。そしてこちらが少しだけ考える余地を与えてくれて、思わずハッとして幕を閉じる…という。
私は、これくらいの絶妙な匂わせ加減が好きですね。やはりミッシング〜には、これがあと少しだけ(!)足りなかった…。
とはいえ『霊的ボリシェヴィキ』でも監督の才能は十分に発揮されていますし、次回作も絶対に見たいです!


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