
あまりに攻めた実験映画に驚いたのですが…笑。本作では、目的も趣旨も分からない得体の知れない恐怖を味わうことはできます。ただやはり、これを映画として劇場でかけたから、巷では低評価が多いのかと。個人的に映画というのは、最低でも主人公の顔がしっかりと映って、それ相応の台詞もあって、多少なりともストーリー性のあるものを言うと思うので…。
作品データ
【製作年度】2022年
【製作国】カナダ
【上映時間】100分
【監督】カイル・エドワード・ボール
【キャスト】ルーカス・ポール
ダリ・ローズ・テトロー
【鑑賞方法】劇場公開中
(鑑賞時にご確認ください)
あらすじ
真夜中に目が覚めた2人の子ども、ケヴィンとケイリーは、家族の姿と家の窓やドアがすべて消えていることに気づく。歪んだ時間と空間に混乱する2人は、暗闇に潜むうごくめく影や悪夢のような恐ろしい光景に、次第に飲み込まれていく。(映画.comより)
年齢制限は?
年齢制限はないので、どなたもご覧になれます。
レビュー ( 2025・02・25 )
1、暗い。粗い。映らない。

『子供が夜中に目を覚ますと、両親の姿がないどころか家中のドアや窓が全て消えている』って、こんな面白そうな筋書きは数年に1度なので以前からとても楽しみにしていました。
なのになんと公開日を忘れており(え?)数日遅れての鑑賞。しかもこの数日間で、何やら散々だという評価を耳にしてしまいだいぶ萎えるw
日本語のようにも聞こえるタイトルですが、どうやら意味はないらしく、原題もそのまま『SKINAMARINK』のよう。
舞台は1995年。『ジョシュア・ブックホルターのご家族に感謝する。彼らの協力なしに本作は完成しなかった…』というテロップから物語は始まります。
家の中の暗い映像。しかもそれはかなり粗く、アングルも定まらず、斜めだったり、逆さだったりとこちらを不必要に煽ってきます。
天井や壁が映し出される率がかなり高く、それらの映像に人物の話し声などがかぶさってきます。主人公サイドの姿はほぼ映らず、たまに足元が映るのみ。(※主人公の横顔は一瞬映ります)
そしてそれに追い打ちをかけるように、終始ブチブチというノイズも流れ続けます。
てっきりオープニングの演出なのだと思っていたら、このままいくタイプなのだと理解したときの絶望感(・ω・)そして、1人の女性がポップコーンを抱えて帰っていきました(開始15分ほど)。
ちなみに他のレビューを見てみても、退場者が結構いるようですね…。
ただ公式サイトによると『制作費わずか15,000ドルにもかかわらず、692館という異例の規模で北米公開。その勢いはとどまらず、最終興行収入約200万ドルと驚異の数字を叩き出した』とのことで、向こうではかなりウケたようです。
2、体感時間は長く感じなかった

私もこの時点で、巷での低評価に納得し始め『この状態で…100分…!?(私が)寝るのが先か(映画が)面白くなるのが先か…』などと考えていました。
周囲はどうなのだろう?と、同じ列の知的風ダンディをチラチラ見てみると、ずっと神妙そうな顔で見てるのですげーって思ってたんですが、後半で何度か確認したらカクッ!ってなってて安心しました(ヒマ?)
そして結局、舞台は完全に家の中のみ、全編暗い、人物が(ほぼ)映らない声のみの100分耐久レースに打ち勝ち?ました。
ただ、こんな言い方をしておいてなんですが、実は寝落ちすることもなく、時間もそこまで気にならなかったことに自分でもかなり驚きでした。これならば、もっと体感時間が長く感じた有名作品なんかもたくさん?あります。笑
途中でやたら暖房が強くなり、寝かせようとする嫌がらせかと思いましたが…怒

3、結局、何が起きるのか

トイレも消える
ケヴィンとケイリーが目を覚ますと、両親もおらず家中のドアや窓が消えていた。…という触れ込みですが、部屋のドアなどはありましたし?玄関の(1階の?)ドアがなくなっていて、外に出られないということなのでしょうか。
またドアや窓だけでなく、なぜかトイレ(便器)も消えてしまいます。
モノが”あった時”と”ない時”を交互に映したときの効果音が、UFOが飛来したときのような謎のチープ音…。
アニメが流れ続ける
テレビは見れるようで、ずっとアニメが流れています。その中のウサギ?が突然消えるのですが、それにリンクするように、家の中のぬいぐるみが消えたりもします。
またアニメの中で、ドアを開けても延々とドアがあるという、現実世界を思わせるシーンも。
姉弟を呼ぶ声
たまに2人を呼ぶ男性の声。『2階へおいで』『地下へおいで』『一緒に遊ぼう』だの。
ケイリーがいつの間にか居なくなったと思ったら『パパとママに会いたいと言うから口を取ってやった』と、声の主。
またケヴィンはその声に『目にナイフを刺してみて』と言われます。
緊急通報をする
電話が繋がるようになり、緊急通報でやり取りをするケヴィン。
『家には誰もおらず、ケガをしてしまい具合が悪い』などと伝え『電話を切らないでね』と言われるが、切れてしまう。
天井に血らしき?物が飛び散り、消え、また飛び散り…というリピート演出。ケヴィンが自身を傷つけたのか…。
1年以上もこの状態らしい…
後半になると『572日目…』のテロップ。…1年以上もこの状態なの!?…
実は冒頭で、ケヴィンは寝ている間に歩きながら階段から落ちて頭を打ったというエピソードがあり、じゃあこれってケヴィンの夢の中の出来事なの?という気も。
ラストはスクリーンにうっすらと顔が浮かび上がり『…お眠り』と女性らしき声で言い残し『THE END』。
これが出た瞬間、場内一丸となっての『…終わった…』という心の声が聞こえてくるようでした(・ω・)

『トイ・ストーリー』でおなじみ、白いリンリン電話が恐怖モチーフで登場。しかも突然、キーン!という大音量と共に映し出されます。このテのジャンプスケアは3回ほどありました。
4、『映画』の定義とは何か…
確かに、ここまで攻めた作品はこれまでに見たことがなかったですし、というより、これをそもそも映画と言って良いのか…。
予告以外の知識は一切入れずに劇場へ行ったのですが、イマジネーションホラーと言われているらしく、公式サイトでも『現実と悪夢の境界を彷徨うような実験的な映像と解釈を委ねるミニマリスティックな演出』と。
確かに実験映像としては、悪いとは思いませんでした。私が意外と飽きずに?見れた理由もおそらくこれで、例えば夜中にたまたまつけたテレビで流れていたら、相当怖いと思います…。
本作には、目的も趣旨も分からない、得体の知れない恐怖はあります。
ただこれを映画として劇場でかけたから、巷ではこのような評価が多いのだと。
やはり映画というのは、最低でも主人公の顔がしっかりと映って、それ相応の台詞もあって、多少なりともストーリー性のあるものを言うと思うので…。
現在公式サイトを見ると、全国42の劇場で上映されるようですが、ミニシアターだけでなくシネコンでもかかるのがすごい(!)シネコンでも実験しているのでしょうか…(・ω・)
私は今回、たまたま時間の都合で近隣のミニシアターでなく少し遠くのシネコンで見たのですが、これは正解でした!ただでさえ息苦しくなるような閉塞感のある作品なのに、小さなハコで見るのはキツすぎます…苦笑
ちなみに11もあるスクリーンのうち、3番目に席数が多いスクリーンでの上映だったのですが、勝算があったの…笑!?定員230名に20名ほどのお客さんでしたが…。

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