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映画【みなに幸あれ】気持ち悪い理由はコレ|祖母の出産と味噌の謎【ネタバレ】

みなに幸あれ

叔母の”セルフ薪割り”や祖母の衝撃的すぎる”妊娠・出産”。また”味噌”という絶妙な生々しさ…。全体的に絵面のインパクト重視なシーンも多く、動機や背景がほぼ丸投げに見えるのも理解できます。でも、これらのぶっ飛び展開、実は全部ひとつのテーマに繋がっているんですよね。本記事では、意味不明と言われがちな本作を「生贄の構造」からしっかり整理しつつ、分かりやすく考察していきます。

作品データ

【製作年度】2023年
【製作国】日本
【上映時間】89分
【監督】下津優太
【キャスト】古川琴音、松大航也 ほか

あらすじ

祖父母が暮らす田舎へやって来た看護学生の“孫”は、祖父母との久々の再会を喜びながらも、祖父母や近隣住民の言動にどこか違和感を覚える。祖父母の家には“何か”がいるようだ。やがて、人間の存在自体を揺るがすような根源的な恐怖が彼女に迫り……。(映画.comより)

年齢制限は?

R15指定なので、15歳以下の方はご覧になれません。

どこで見れる?

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※ 配信・レンタル状況は 記事作成時 のものになります。鑑賞時にご確認ください。

レビュー・考察【ネタバレあり】

1、実は意味不明ではない…!?

シャマランの『ヴィジット』のような、じいさんばあさんがヤバいネタは大好物。しかも本作は邦画ということもあり、観る前はさぞかし生々しくてキモいのだろうと期待していたのですが…。

……あ~こっちか〜、こっちにいったか〜と。

正直、かなり賛否が分かれており、世間的にも評判はあまり良くありませんw

祖母の”妊娠・出産”を含め、全体的に絵面のインパクト重視なシーンも多く、動機や背景がほぼ丸投げに見えるのも、その理由としては納得できるところ。

ただ、それでも物語として見たときに、すべてのエピソードに共通しているのが「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」という一点。この軸だけは最初から最後まで一貫しているんですよね。

なので個人的には、”意味不明”というよりは「説明が少ないだけで筋は通っている作品」という印象で、普通に楽しめました。

田舎ホラーに見えて実は「社会ホラー」

結論から言うと、この映画は「一家に1人、生贄がいる世界」の話。しかもそれは、ただの村の風習ではなく、人間社会そのものの構造として描かれてるのがポイント。

作中ではかなり極端に見せていますが、要するに言っていることは…

  • 誰かが損しているから、誰かが得している
  • 誰かが苦しんでるから、誰かが普通に生きられている

これを物理的に可視化したのが「生贄」というだけなんですよね。

なので本作は、よくある田舎ホラーに見えて中身はほぼ社会ホラーなのです。

村だけの話じゃないのが一番怖い

最初は「ヤバい村の話」だと思わせておいて、後半からじわじわ分かってくるのが「この村だけの話ではなく、どこに行っても同じ構造がある世界」だった、というオチ。

個人的にはここが1番好きで、本作の”気持ち悪さの正体”ってここだと思うんですよね。

幽霊でも怪物でもなく、普通に生きてる人間の仕組みそのものが怖いという。

祖父母の奇行も、叔母の思想も、ラストの違和感も全部この構造にはちゃんと繋がっています。

2、「生贄」の仕組みとルール

みなに幸あれ

この作品のベースになっているのは、「一家に1人、生贄がいることで、その家の幸せが保たれる」というシンプルなもの。

祖父母の家では監禁された男がそれにあたっていて、まるでペットのように“飼われている”状態でした。

そんな光景を、目の当たりにした主人公は、「こんなのは間違っている!」と、生贄を逃がしてしまいます。しかし、その結果として突きつけられるのが「次の生贄を用意しなければならない」という現実

生贄がいなくなると起きる「崩壊」

では、「生贄」がいなくなったらどうなるのかというと…

  • 家族が突然笑い出す
  • 「味噌」が取れない…(後述します)
  • 体から出血するなど異常が起き、やがて死に向かう

といった、明確な「崩壊現象」が起きていきます。

ここが1番キツいところで、善意で生贄を逃がしたはずなのに、構造そのものからは逃げられないんですよね。

誰かを犠牲にしない限り、日常は維持できない……だからこそ、生贄がいなくなった瞬間にすべてが崩れ、同時に“次を差し出すしかない”という選択肢に追い込まれるわけです。

「生贄」がいない家もいる…!?

ちなみに、主人公の幼なじみの家は、この“生贄の仕組み”を持たない側として描かれています。

彼自身も特に異常があるわけではなく、普通に生活しているように見えますが、どこか諦めたように「自分は幸せになれない」と語るのが印象的でした。

ここで見えてくるのは、「生贄がある側」も「ない側」も、どちらも歪んでいるという構造。

犠牲の上で成り立つ幸せか、そもそも幸せに手が届かない人生か
どちらを選んでも救いがないあたり、この作品の嫌なリアルさがよく出ているなぁと感じました。


未見の方は、こちらから視聴できます◎

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3、祖父母はなぜ狂っていた?

みなに幸あれ
かく、みんながおかしい…

物語冒頭からエスカレートしていく、祖父母の異様な言動と行動…(むしろ「コレを見にきた」まであったんですが)正直かなりのインパクトでした。

廊下で口を開けて立っていたり、突然突進してきたり、指を舐めるあのシーンだったり…。
なかでも、「目に入れても痛くない」と、孫の手を自身の目の中に入れようとするくだりはお気に入り◎

ただ、これって元からヤバい人たちだったというより、この仕組みに長く適応した結果だったのかな?とも。

家に生贄を置き、それを“当たり前”として受け入れて生きてきたことにより、普通の倫理観はもう保てなかったのでは。そう考えると、怖いのは行動そのものよりも、そこに至るまでの過程なんですよね。

なのでこれら奇行の数々は、合理的な意味があるわけではなく、人間らしさが壊れている状態そのものの表現なのかと思いました。

祖母役の女優さんが逸材すぎる

あからさまな棒読みが異様さを掻き立て、恐怖度を増していましたw 途中からはもはやクセになってくる中毒っぷり。

4、叔母の正体と“0と1の世界”

主人公の叔母は、もともとは主人公と同じく「生贄なんておかしい」と考え、家を出た側の人間。

そんな叔母を訪ねる主人公ですが、なんと結果的には彼女も生贄を抱える側になっていた…。逃げたのに、結局は逃げきれなかったんですね。

叔母が語る「0と1」という考え方もかなり象徴的で、この世界には中間がなく、どちらかしか選べないという意味に見えます。

犠牲にする側か、犠牲になる側かー

どちらにもなりたくない、という選択肢は存在しない。だから叔母は、山に逃げてもなお、そのルールの中でしか生きられなかったのでしょう。

薪割りのシーンが意味するもの

みなに幸あれ

視覚的には本作で最もインパクトがあった、叔母による”セルフ薪割り”…(;ω;)

自身で終わりを選んだことからも、叔母はこの世界から”解放”されたかったのでしょう。

同時に、主人公にそれをやらせたことで、この構造からは逃げられないという事実を引き継がせたとも言えます。

5、「祖母の妊娠」と「味噌」の意味

妊娠=この構造は終わらない

祖母の”妊娠・出産”は他の映画でも見かけることのない衝撃的なシーンですが、ここも単なる“気持ち悪さ狙い”で片付けるのはもったいない?部分。

というのも、妊娠は「この仕組みが次の世代にも続いていく」ことの象徴に見えるんですよね。生贄を置いて、成り立つ幸福。その歪んだ構造が、そのまま「次の命」として生まれてくる。

なので、なぜ祖母が妊娠したのかという理由づけや、生物学的にどうとかいう現実的なことは、ここでは一切無視(笑)。だからこそ、このシーンは余計に不気味なんだと思います。

とはいえ、まるで組体操のような出産シーンは、ビジュアル的に狙っているとは思いますが(・ω・)

「なんで味噌なのか」問題

もうひとつ印象的なのが、「味噌」の存在(味噌という絶妙な生々しさ)

なんと生贄は単なる犠牲ではなく、物理的に味噌も作られる“資源”として扱われているという。なので、味噌が取れないというのは、その“供給”が止まったことの象徴。

で、ここで疑問なのは、なんでよりによって味噌?ってところなのですが…。

  • 味噌(発酵食品)=時間をかけて変化するもの
  • 中身がどう作られているか、外からは分からない…
  • 日本の食卓にめちゃくちゃ馴染んでいる

なので、自分が普段“当たり前に消費してるもの”が、実は誰かの犠牲かもしれないとう、この映画のテーマなのかなと。

「気づかないうちに口にしてる」ものの象徴であれば、味噌でなくてもよかったのかもしれませんが?人間が発酵されて、生活の一部として消費されてる可能性があるって、これ以上ない最強モチーフですよね(書いてて、もう字面だけで無理なんですが)

6、ラストシーンの意味

終盤、主人公は彼氏の実家へ向かう途中、通りがかった家の窓に目をやると、女性が一瞬こちらをうかがい、すぐにカーテンを閉めます。

この行動は明らかに不自然であり、この家にも「見られてはいけない何か」がある側の反応に見えます。

そして主人公もそれを一瞬で察していて、「ここも同じだ」と理解したような表情を見せる。おそらくこのシーンは、生贄ルールが「他の家にもある」と気づかせるための演出なのでしょうね。

「みなに幸あれ」というタイトルの意味

ラスト、主人公はどこか受け入れたような表情を見せます。

これを“堕ちた”と見るか、それとも“理解してしまった”と見るかは人それぞれですが、どちらにしても言えるのはこの世界では、誰かを犠牲にしない限り、幸せは成立しないということ。

だからこそ、ラストでもう1度登場する『みなに幸あれ』というタイトルが、かなり皮肉に効いてくるんですよね。

ちなみに、ある動画サイトに本作の監督さんが出ていたのですが、まだ若い方で驚きました!
確かに脚本は荒削りな部分があるかもしれませんが、設定やテーマはとても良かったと思いますし、なんと言っても本作が長編初監督作品というのは凄い。監督の次回作もぜひ見たいです!

本作の予告は見ないほうがいい…

私は、絶対に劇場で見ると決めた作品は予告をあえて見ずに行くことも多いのですが、本作に関しては事前情報を一切入れずに劇場へ行ってよかったです!

予告、かなりネタバレてません…?重要なところがほぼ予告で出てしまっているし、まっさらな気持ちで映画を楽しみたい私からしたらちょっとNGすぎました笑。

なので、本作を見る予定がある方はぜひ、予告を見ずに本編を観ることをオススメします。

監督と古川琴音インタビュー

下津優太監督と古川琴音
(OVO(オーヴォ)より)

「ホラー映画ってこんなに疲れるんだと実感しました」「分からないことを楽しんでもらえたら」古川琴音、下津優太監督『みなに幸あれ』【インタビュー】(OVOより)

本作、なんと予告も監督が作ったんだとか。私のように劇場に行くと決めている人からしたらネタバレになるかもしれませんが、本作に興味がなかった人がこの予告を見れば、気になるのは間違いないです。

確かにまだ無名の監督ともなると、とにかく予告で客を引っ張らねばならないので、そういう意味ではこの予告で正解なのでしょうね。

ホラー映画の場合、怖いシーンをあまりに見せてしまうと「次にあのシーンだな…」と分かってしまうしで、予告でどこまで見せるのかってかなり難しい問題ですよね。

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