映画【近畿地方のある場所について】実話?怖い?…結論、恐怖は続かず【ネタバレ】

『近畿地方のある場所について』──タイトルからして不穏でインパクト抜群なこの作品。原作が話題になっていたので、一体どのような怖さがあるのだろう!?…と期待して鑑賞。※ちなみに本作、実話ではありません。しかし“本当にあった話かも”と思わせてしまう演出こそが本作の醍醐味…。が、後半は見せすぎによるまさかの失速…。さらに菅野美穂の演技も、実力派らしからぬ違和感が…?

作品データ

【製作年度】2025年
【製作国】日本
【上映時間】103分
【監督】白石晃士
【キャスト】菅野美穂、赤楚衛二 ほか

あらすじ

オカルト雑誌の編集者が行方不明になった。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪事件や中学生の集団ヒステリー事件、都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件や怪現象の数々だった。同僚の編集部員・小沢悠生はオカルトライターの瀬野千紘とともに彼の行方を捜すうちに、それらの謎がすべて“近畿地方のある場所”につながっていることに気づく。(映画.comより)

年齢制限は?

年齢制限はないので、どなたもご覧になれます。

どこで見れる?

8月8日(金)より、劇場公開中
(鑑賞時にご確認ください)

レビュー ( 2025・08・22 )

1、どんな作品?…公開前の不安

『近畿地方のある場所について』は、”背筋せすじ”さんという作家によるホラー小説が原作。原作は「このホラーがすごい!2024年版」で1位を獲得するなど、ホラー好きの間では注目度が高い作品でした。

都市伝説や怪談が折り重なり、最後にすべてが「近畿地方のある場所」という一点に収束していく構成が、じわじわと怖さを増幅させると評判に。

気になってはいたものの読書勢ではない私は、まぁそのうち映画化されるだろう(・ω・)などと思っていたら、”あの”白石晃士監督が映画化するとの情報が!

白石監督の『サユリ』はその年のベストだったほど大好きな作品ですし、とても楽しみにしていました…………が、キャストが菅野美穂ということを知り「え、そんな有名人を起用するの…?」

ということは、いわゆる商業映画になるのか…という、一抹の不安も…。彼女自身がどうこうではなく、となるとおそらくR指定ではなくなりそうだし、白石監督のカラーに合うのだろうか…とも。

そして脚本には、白石監督と大石哲也…というと『”それ”がいる森』の脚本にも携わっていたよね…(不安再び)。でも、原作者の背筋さんも脚本協力しているしね!と、気を取り直し?

…ともあれ本作は、原作ファンの期待と、映画としての大々的な宣伝とが合わさり、“2025年夏のホラー大本命”という位置づけで公開された作品なのです。

原作者は「ノロイ」に影響を受けた!

原作者である背筋さんは、白石監督の『ノロイ』に影響を受けて『近畿地方のある場所について』を執筆したんだとか。

2、不穏な冒頭と怪異の連鎖

オカルト編集者と“近畿地方のある場所”

物語は、オカルト雑誌の編集者・佐山が行方不明になるところから始まります。彼は、不可解な噂や未解決事件を追っていたのですが、その調査の途中で消息を絶ってしまう。

そこで、若手編集者の小沢(赤楚衛二)とオカルトライター・瀬野(菅野美穂)が、佐山の残した資料をもとに調査を始める。

彼らが数々の怪異を経てたどり着いたのは、「近畿地方のある場所」に集約されているという事実だった。

怪異の見せ方も、ある情報番組の1コーナーである突撃取材や、日本アニメ昔話(短編アニメがそのまま流れます)、ニコ生映像などバラエティに富んでおり飽きさせません。

最初は単なるオカルト記事の取材のはずが、徐々に彼ら自身が不可解な現象に巻き込まれていく展開へ。

観客は、この時点ではまだ“どこまでが真実で、どこからが作り物なのか”の境界線が見えず、不安感と好奇心で引き込まれていく作りになっています。

「凸劇・ひとばしら」として登場

九十九黄助つくもきすけ(旧・かいばしらさん)が出演することは知っていたのですが、ニコ生配信者という自身の特性を活かしたぴったりの役で登場…笑。白石ファミリーの一員になりつつありますね。

赤い服の女と了…怪異たちの顔ぶれ

本作に登場する怪異はどれもクセが強く、序盤の不気味さを支えています。なかでも、メインとして描かれるのは…

  • 赤い服の女
    ・了の母親とされる存在
    ・“ジャンプする赤い女”として目撃される
  • 了(あきら)
    ・首が垂れた少年の姿で現れる怪異
    ・“ましろさん”という身代わり遊びに関わり、命を代償にした存在とも言われる

赤い女と了は“親子の怪異”としてセットで語られ、この曖昧なつながりこそが前半のゾクゾク感を高めていました。


※ここから先はネタバレありで語ります。
果たして、ラストで待ち受けるサプライズとは…。

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3、本作に関しては見せすぎた?

「この見せ方は違う」だろう…

ホラー映画って「恐怖の実体」を見せる割合と、見せ方のバランスが非常に難しいジャンルだと思います。

以前、私がレビューした『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』では

『謎は謎のまま放置される』スタイルが本作の特徴でもあり…もう少し謎を知りたかったし、モヤっとする部分も多いのですが…

と、こちらは「もう少し見せて欲しかった」タイプの作品でした。

しかし、本作『近畿地方のある場所について』に関しては…。
原作を読んでいない私でも「…これ、見せすぎてない?そしてたぶんこの見せ方は違うだろう…(・ω・)」などと思いながら見ていました。

現に、原作ファンのレビューを見ると、映画はかなり大胆な改変がされているようです。おそらく、原作は相当面白いのだと思います。

「正体が分からない」「説明がないからこそ怖い」という曖昧さが原作の魅力でもあったのに、映画では逆に“具体的に描きすぎる”方向へ走ってしまったとのこと。

白石監督の『サユリ』も原作にはない設定が加えられていましたが、あちらはあくまで「人間の霊」だったからこそ、現実的なホラーとして受け止められたので、説得力がありました。

白石監督の“見せる恐怖”路線

白石監督といえば、元々『ノロイ』や『コワすぎ!』シリーズのように、モキュメンタリー形式で怪異を“はっきり映す”スタイルが持ち味。

曖昧なままにせず、観客に「コレが出てきましたよ!」と突きつける演出は、ファンの間でも賛否はあるものの、強烈なインパクトを残す手法。

ただ本作に関しては、その“見せる恐怖”が逆効果に働いてしまったようにも。

前半は、ドキュメンタリー調でじわじわ不気味さを積み上げていく構成。実際にあった噂話や証言が少しずつ繋がっていく雰囲気も良く「この先に何が待っているのだろう」と想像が広がる怖さがあったと思います。

ところが後半になると、怪異を派手に“実体化”してしまう展開へ。これにより、序盤にあった「得体の知れない怖さ」が一気に薄まってしまったのです…。

4、生贄のサプライズは光るが…

小沢を差し出すシーンの衝撃

物語のクライマックスで、瀬野(菅野美穂)が小沢(赤楚衛二)を“生贄”として差し出す場面があります。
ここは正直、予想していなかった展開で、ちょっと驚きました。

「一緒に調査してきた仲間を切り捨てる」という非情さが突きつけられ、なるほど、これが本作の真髄でもあったのね、と…。

ただこの直前、息子を亡くしていた瀬野が「喪失を経験した者たちが共同生活を送る団体」の一員であったことが判明するのですが、瀬野がメンバーの一員として映っていたシーンになんでか笑ってしまったんですよね…(・ω・)菅野美穂の表情のせいだったんだろうか…。

良いアイデアも“見せ方”が惜しい

やはり、本作を受け入れらないという方のほとんどが、クライマックスのシーンにあるかと思います…。

小沢を生贄にするという展開はアイデアとしては面白かったのですが、その“見せ方”にどうしてもチープさが拭えず。

  • 木の陰から、”触手コダマ”や、たくさんの目玉…
  • 『”それ”がいる森』を彷彿とさせる、森の中の怪異・再び
  • 心理的な怖さから一気にB級ホラー的な演出へ

せっかくのサプライズなのに、「ゾッとする」というより「そういう演出にしたのね…」と冷めてしまったのは残念。

クリーチャーやオカルト的な仕掛けはインパクトはあるのですが、それまでの淡々とした不気味さとはトーンが合っておらず…。

しかし、これこそが白石監督らしい持ち味であると同時に、ここでもまた作品の方向性と噛み合っていなかったようにも。

5、女優・菅野美穂と眠気との闘い

菅野美穂、どした…?

菅野美穂といえば、これまでシリアスもコメディも自在に演じてきた実力派女優。

私自身、これまで彼女の演技を「下手だ」と感じたことはありません。むしろ若い頃なんて、ホラー映画やオカルト作品によって圧倒的な存在感を見せていたほど。

ところが本作では「…あれ、菅野美穂どした?」というほど、棒読みっぽい箇所もあり、その力が活かされておらず…。

瀬野というキャラクターは小沢を騙し、生贄として差し出す役柄だからこそ、“わざと不自然に振る舞っていたのでは説”も。いわゆる「下手くそな演技をしている演技」ですね(・ω・)

…ただ正直、女優に対して「もしかしてわざと下手に見せてるの?」と疑われる時点でアウトだろというw せっかくの実力派なのに、本人の魅力がほとんど消えてしまっていたのは残念でした。

『催眠』が好きだった!

菅野美穂といえば、当時劇場で観た『催眠』が好きでしたね〜。確か、彼女の笑う演技がすごく怖かった記憶…。見返したいのですが、配信にないんですよね。

また、本作で共演した稲垣吾郎と付き合ってたのも懐かしい…。

本作が向いている人・いない人

…さすがに菅野美穂の演技のせいだけではないでしょうが、本作の鑑賞時は私のコンディション(も)絶不調で、開始30分〜ラストまで眠気を払拭することができず…(;ω;)

大抵、劇中に眠くなってもいずれ立て直すことが出来るのに…近畿地方で見ていた呪いもあったのでしょうか(?)

本作を総括すると―

  • 向いている人:白石監督独特の“見せるホラー”を楽しみたい人、椎名林檎の主題歌を大音量で浴びたい人。
  • 向いていない人:静かな怖さやじわじわ侵食するタイプのホラーを求めている人、原作のファン。

序盤の雰囲気は良かったのに、ほぼ眠気と戦う羽目になったのは残念です(私個人の問題)。
配信に来たらもう1度鑑賞する予定なので、そのときに評価が変われば加筆します…笑

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