エンタメやご都合主義なしの、過酷なサバイバル劇
スコット兄弟製作×リーアム・ニーソンというタッグとそのストーリーから、当時劇場へ行こうか迷いながらも結局DVD鑑賞になってしまいました。そしてちょうど日本での公開時に、ト二ー・スコットが自死(映画.comより)というショッキングなニュースが飛び込んできて驚きました。彼が携わった作品としては、本作が遺作となるのでしょうか。
作品データ
【製作年度】2012年
【製作国】アメリカ
【上映時間】117分
【監督】ジョー・カーナハン
【キャスト】リーアム・ニーソン、フランク・グリロ ほか
【鑑賞方法】Rakuten TV など
(鑑賞時にご確認ください)
あらすじ
『グラディエーター』のリドリー・スコットと『アンストッパブル』のトニー・スコットの兄弟が製作を務めたサバイバル・アクション。アラスカのツンドラ地帯で起きた飛行機事故の生存者たちが、過酷な大自然の中で決死のサバイバルを繰り広げていく姿を、壮大なスケールで活写する。(シネマトゥデイより)
年齢制限は?
PG12なので、12歳未満のお子さんは保護者同伴が望ましいとされます。
レビュー ( 2013・02・08の記事に加筆 )
1、エンタメ色を抑えた、護りのサバイバル劇
石油採掘現場で働く者たちを乗せた飛行機がアラスカに墜落。奇跡ながら生き残った7人の男たちによる、雪山でのサバイバルです。
−20度という極寒の中、食糧もなく、物資もなく、救援も来ない絶望の地。劇中のセリフにもありましたが、やはりアンデス山脈に墜落し、生き延びた者たちを描いた『生きてこそ』という作品があります。こちらは仲間の遺体を食し生き延びたことについて議論を巻き起こした、衝撃の実話です。
また2017年製作で、イドリス・エルバとケイト・ウィンスレットが共演した『ザ・マウンテン 決死のサバイバル 21日間』(Disney+など)や、2018年にはマッツ・ミケルセン主演の『残された者ー北の極地ー』(U-NEXTなど)という雪山サバイバルものもありました。このテのサバイバルものってちょこちょこ出てきますよね。
さて、リーアム&スコット兄弟製作ということでド派手なエンタメアクションを想像すると少し肩透かしを食うかもしれません。究極の状況下で様々な苦難が待っているのですが、主に描かれるのは狼との死闘です。とはいえ大した武器もないので、ひたすら狼の群れから逃れようと歩き続ける『攻めよりも護り』の状況が描かれます。
リーアム主演のアクションものとしてはイマイチ評判が振るわないのは、これが要因かもしれませんね。やっぱり皆さん、暴れる強いリーアムを期待しているのでしょう笑
『生きてこそ(93)』と、Netflixでリメイクされた『雪山の絆(23)』
『雪山の絆』はPG12指定になっていますが、こちらは丁寧なドキュメンタリーと言った印象で、私は映画としては『生きてこそ』のほうが感情移入できましたね。
2、わずかな希望よりも、リアルすぎるほど過酷な現実を見せつけられる
狼の前ではいとも簡単に食われてしまう、無力な人間たち-。エンタメにありがちなご都合主義などはほぼなく、わずかな希望よりもリアルすぎるほど過酷な現実を見せつけられます。また皮肉にも、主人公は採掘場で狼を狩ることを生業としていました。
過去の回想シーンが詩的表現で語られたりと少し文学的な要素もあります。実は主人公は墜落する少し前に自ら命を絶とうとしているのですが、これについて詳しく言及するようなこともなく、見る者に判断を委ねています。
次々とメンバーが減って行き、最初は何かと悪態をついていたメンバーが自身の死を悟り主人公にお礼を言うシーンは、あまりのリアルさになんだか泣けました…。『…オレはもう十分やった。…だからもういいんだ』という、一見諦めとも思える台詞は、実は達成感からきているような気がしたんですよね。
死にもの狂いで生にすがるよりも、あるところまでくると満足に近いような感情が生まれるんではないかと…。これにはかなり共感してしまいました。
3、『GREY』は、作品のイメージカラーと結末のダブルミーニング
主人公の父が言った、劇中何度か出て来る台詞に『…闘うことができたらその日に死んでもかまわない』というようなものがありますが、主人公の最後の決断はまさにこのことですね。
エンドロール後のワンシーン、相討ちのようにも見えましたが結局のところ真相は分かりません。それでも極限であそこまで出来たら、もう何も悔いはないでしょう。『GREY』とは作品そのもののイメージカラー以外に、この結末のことを指しているのかもしれませんね。
正直なところ、見終わったあと大きく感動するだとかスッキリするような類いの作品ではないですが、彼らの生き様には深く考えさせられるものがありました。シンプルな筋書きながら骨太なストーリーで、生きるということの意味を少し別の角度から捉えることができる作品でした。
このような作品に携わったトニー・スコットが、自ら命を絶ったことを考えると非常に残念で複雑ではありますが、せめて彼の遺志を尊重してあげることが私たちにできる唯一のことなのかもしれないですね…。
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