PR
私のなかではガイ・リッチー監督というと、ちょっと小粋でイカした男たちがヘイ!みたいな印象。戦争ものだなんて珍しいなぁと思ってたんですが、こんなに硬派で渋い演出も出来るなんて驚きました!これまでに見た彼の監督作のなかでは、本作が最も好きになりました。
作品データ
【製作年度】2023年
【製作国】イギリス/スペイン
【上映時間】123分
【監督】ガイ・リッチー
【キャスト】ジェイク・ギレンホール/ダール・サリム ほか
【鑑賞方法】U-NEXT(鑑賞時にご確認ください)
あらすじ
2018年、アフガニスタン。タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍曹長ジョン・キンリーは、優秀なアフガン人通訳アーメッドを雇う。キンリーの部隊はタリバンの爆発物製造工場を突き止めるが、大量の兵を送り込まれキンリーとアーメッド以外は全滅してしまう。キンリーも瀕死の重傷を負ったもののアーメッドに救出され、アメリカで待つ家族のもとへ無事帰還を果たす。しかし自分を助けたためにアーメッドがタリバンに狙われていることを知ったキンリーは、彼を救うため再びアフガニスタンへ向かう(映画.comより)
対象年齢は?
年齢制限はないので、どなたでもご覧になれます。戦闘シーンにそこまで残虐な描写は含まれていません。
戦争映画のレイティングについて
戦争映画の金字塔でもある『プライベート・ライアン』も、実は年齢制限を設けていません。
当初R指定が付く予定でしたが、スピルバーグ監督が『17歳以下の子供も戦争に行ったんだ』とアメリカ映画協会を説得し、上映にこぎつけたんだとか(『NC-17指定の映画一覧』より)
ただし、冒頭のノルマンディー上陸作戦のシーンは大人でも相当ショッキングなので要注意。
レビュー ( 2024・06・03 )
1、見たことなかったガイリッチー作品
タイトルからなんとなく王道な感動路線なのかと思ったら、前半・後半で主人公が入れ替わり、違う映画を2本観たようなお得感のある作品。
戦争映画ではあまり見たことのなかった米兵と通訳の交流を軸にしているというのが新しく、アフガニスタンを舞台にした友情ものと言っても良いほど。
こういうアプローチで描かれた戦争ものは見たことがなくて新しかったです。ガイ・リッチー監督が、米兵と通訳のドキュメンタリーを見て発想を得たんだそう。
ユーモアを一切封印した正統派なシリアス路線で、骨太で渋すぎる演出の数々には、言われなければ監督がガイ・リッチーだとは分からないかも。
そういえば、意外にも?彼は『アラジン』の実写版も監督しているんですよね。こちらも成功させていることから、やはり監督としての手腕は確かな人なんでしょうね。
当時の妻マドンナを起用し、ラズベリー賞を受賞
ちなみに、監督が当時結婚していたマドンナを主演にした『スウェプト・アウェイ』では、ゴールデン・ラズベリー賞を受賞(ここでほじくるのか)。
マドンナと結婚したばかりだったし、許してあげてください(?)
ちなみに私は『スウェプト・アウェイ』のオリジナルである『流されて…』はスキです笑
2、見返りを求めない男
ジョンとアーメッド以外の隊員は全滅してしまい、ジョンも負傷。
するとアーメッドは即席の担架を作り、ジョンを米軍基地まで運ぶためおよそ100キロもの道(もはや道とすら呼べないところも)を行くのです。
あまりに過酷すぎるため、辛すぎて吠えたり、泣いたりしながらも(!)ジョンを守ってくれる彼の人間性にただただ泣ける…。
ポイントとなるのは、ジョンとアーメッドは元々、絆はおろか仲間意識さえもほぼ芽生えていない関係性だったということ。
なんならジョンは、アーメッドの日頃の態度から、少し彼を煙たがっていた節もあり。
アーメッドからしたら、通訳をすればアメリカ行きのビザを貰えるという条件はあったものの、それだけで彼がここまで出来たとは到底思えず…。
一体、彼の中の何がここまでさせたのか…。
ジョンに対して、ただ一言『…ジョン、家へ帰るぞ』。カッコ良すぎかw!
ジョンを運んでいる最中は、今度こそ敵に見つかる!というピンチが幾度も訪れ、こっちも心臓がバクバク。
しかもただの通訳のはずが、冷静で戦闘能力にも長けており、瞬時に状況を見極め敵を殺す判断能力もあり。
ジェイク・ギレンホールは言わずもがなですが、本作では通訳を演じたダール・サリムの演技が凄く良くて、ジェイクを食ってました。
3、もはや、男同士のロマンスもの
そんなこんなでジョンを100キロ運び抜いたものの(!)アーメッドはジョンを助けたことからさらにアフガン兵から命を狙われ続けていた。
さらにアメリカ行きのビザを獲得することなく、現在も家族と逃げ続ける生活を送っていたことを知ったジョンは、再び危険なアフガニスタンへと赴く…。
男性同士なのに、離れ離れになってしまった元カノを命がけで探し出して救出した!みたいな妙なロマンスを感じました…(・ω・)
どうにもこうにもアーメッドの行方が気になって仕方のない、ジョンの行動の数々…。
これはもはや、恋愛映画なんですよ。
そうして、ジョンがようやくアーメッドを見つけ出し再会したシーンは震えました…涙。
アーメッドの、一瞬で状況を把握した、驚きと嬉しさをも含んだ表情…。
しかもジョンの第一声が『…ここは…犬が多いな』って…。カァ~、もう!…抱き合ってもいいんだよ!(?)
お互い言いたいことは山ほどあるはずなのに、状況が状況なのでそれを必死に抑え、目だけで会話をする。
もともと会話シーンが少ない作品だからこそ、それ以外のところで魅せる濃厚な演出は素晴らしかったです。
4、エンタメアクションとしてもスゴい
アーメッドと合流したジョンは、敵に見つからないように、さらにはアーメッドの奥さんと赤ちゃんまでもを連れて(!)味方との合流地点であるダムへと向かう。
ここから、いやいや絶対にムリですよね!?という超ド級ミッションへと!!
銃弾が飛び交いまくる光景と赤ちゃん、という取り合わせのギャップもなかなか見られない光景。
とうとうお互いの弾がなくなり、諦めと、どこか覚悟をしたかのような彼らの表情が、なんとも生々しかったです…。
にしたって、味方の助けが来るのは分かっていても!あまりにも来るのがギリギリすぎて、こちらも狼狽しました(・ω・)
そして間一髪、アーメッド一家とジョンはチャーター機に乗り込み助かるわけですが。…なんとここでも、2人は会話らしい会話をほぼしないという潔さ。
お互いが自分の命を投げ打ってこんな偉業を成し遂げたにも関わらず、チャーター機の中で向かい合い、視線を交わし頷くだけって。
…それだけかい!と思わずツッコんでしまいましたが。
そこにはもはや友情をも超越した、2人にしか分からない関係性が出来上がっていたんですね…。『ありがとう』と声に出すことすら、安っぽいものになってしまうという…。
ティッシュまで用意して号泣の準備をしていた私からしたら、もう少し…あと少しだけ!欲してしまったんですが…うん、やっぱりこの2人はこれで完成形なんでしょうね。
ガイ・リッチー監督の実写版『アラジン』の続編はどうなった?
どうやら現時点では頓挫しているらしく?正式なことは決まっていないようです…。
1作目が面白かっただけに、ぜひとも続編も見たいですね!
【ランキングに参加しています。クリックしていただけたらはげみになります】