【動物界】新感覚!フランスがパンデミックを撮るとこうなる【一部ネタバレあり】

(『動物界』公式サイトより)

『人間が動物になってしまう…』そんなパンデミック映画聞いたこともなかったのに、それがフランス映画だというのだから、とにかく気になって仕方がありませんでした!というわけで、公開初日に行って来ました(ちなみに人間が動物にされてしまうのは『ロブスター』笑)

作品データ

【製作年度】2023年
【製作国】フランス
【上映時間】128分
【監督】トマ・カイエ
【キャスト】ロマン・デュリス、ポール・キルシェ ほか
【鑑賞方法】劇場公開中
(鑑賞時にご確認ください)

解説・あらすじ

人間がさまざまな動物に変異してしまう奇病が発生した近未来を舞台に家族の絆を描き、本国フランスで観客動員100万人を超えるスマッシュヒットを記録したSFスリラー。(映画.comより)

年齢制限は?

PG12指定なので、12歳以下の方は保護者同伴が望ましいとされます。

レビュー ( 2024・11・08 )

1、新感覚・アニマライズスリラー

動物界
(C)2023 NORD-OUEST FILMS – STUDIOCANAL –
FRANCE 2 CINEMA – ARTEMIS PRODUCTIONS

フランスのアカデミー賞とも言われるセザール賞では最多12部門にノミネートされ、観客動員100万人を超えるスマッシュヒットとなった本作

原因不明の奇病により、人間がさまざまな動物へと変異していく世界…。物語は、病の原因を追求するわけではなく、またハリウッドのようにパニック映画として描くわけでもない。

母親がすでに『動物』となって施設に隔離されている、父子のドラマです。SFスリラーと紹介されてはいますがスリラーの要素は薄く、いわゆるパニックを見せるのは冒頭くらいかもしれません。

しかし、親子愛、恋愛、友情、ルッキズムという差別問題や種族の違う者との共存など普遍的テーマをこの設定に落とし込み、1本の作品としてしっかりと堪能できる出来。どのパートもとても自然に描かれています。

これまでかなりの本数の映画を見てきて、何か新しい物を見てみたいなぁという方には、ぜひ見て欲しいです

とはいえ、全国たった21館での上映…

やはりフランス映画ということだからか?現在、全国で21館での上映というのは悲しいですね…(;ω;)ロマン・デュリスは映画好きなら知る人も多いですが、映画をそこまで見ない方からしたらまだ知名度も低いでしょうし、監督もやはりほぼ無名ですしね…

2、『新生物』の造形が凄い

動物界
(C)2023 NORD-OUEST FILMS – STUDIOCANAL –
FRANCE 2 CINEMA – ARTEMIS PRODUCTIONS

予告でもチラッと映っている『動物』。劇中それは『新生物』と呼ばれていたりしますが、まさにその呼び名が正しいかと。

いわゆる私たちが知る動物ではなく『一見、人間』に、鳥の羽根だけが生えていたり、手のみがイカのようだったり…と、身体の一部が変化し始めている者たち。『スター・トレック』に出てきそうなキャラクターがちょっと近いかもしれません。完全な動物になりきれていない異形という意味では、ビジュアル的に少し恐ろしく感じるのが、この段階。

そしてそこからさらに進化した完全体。とは言えやはり、オットセイのようなもの、巨神兵のような姿形…と言った様に、これまでの映画でも見たことの無い神秘的な造形がフランス映画だなぁという美しさを感じさせます。何かの神話に出てきそうな、ファンタジー感も。

また出てくる動物のビジュアルがすべて異なっており、似たタイプがいなかったのも凄いです。

3、すべてはラストのために(ネタバレあり)

動物界
(C)2023 NORD-OUEST FILMS – STUDIOCANAL –
FRANCE 2 CINEMA – ARTEMIS PRODUCTIONS

正直そこまでの展開は、キレイにまとまってはいたものの良作という感じかな?くらいだったのですが、エンディングで跳ね上がりました。おそらく本作の真髄は、ラスト1分にあると思います。監督も、ここを最も伝えたかったのではないかと…。

フランス映画ということで、ラストはなんとなく悲しい展開になってしまうのかと思っていたので、疾走感を感じさせる清々しく美しいラストには、意表を突かれました

ロマン・デュリスのあの笑顔で、一気に涙が込み上げ、エンドロール中も涙が止まず…。
『…行け!…エミール、生きろ!』は決して別れを感じさせる悲しいものではなく、活き活きと、大きな希望を感じさせました。直前の『オオカミは50キロで走るものもいる…』のくだりで、あ…これ悲しいラストじゃないんだ…と、すでに涙腺が…。

母親のことでも息子と意見が食い違い何かと衝突していた父子ですが、最後は息子のためを思い、これまでとは違った『決断』をする父…。

面白かった』よりも『素晴らしかった』という表現のほうが近いかもしれません。これまでに見た作品のなかでもTOP5に入るかもしれないほど、好きなエンディングでした。

4、ロマン・デュリスが素晴らしい

動物界
(C)2023 NORD-OUEST FILMS – STUDIOCANAL –
FRANCE 2 CINEMA – ARTEMIS PRODUCTIONS

息子エミールを演じたポール・キルシェという俳優さんはジュリエット・ビノシュと共演した『Winter boy』のジャケットで見たことがありました。このジャケットと本作はイメージがかなり違っていましたが、雰囲気のある俳優さんなのでまた別の作品で見てみたいです。

そしてなんと言っても!ロマン・デュリスがめちゃくちゃ良かったです…(;ω;)しつこいようですが、あのエンディングは本当に卑怯(笑)。私がこれまでに見た彼の作品の中では、最も好きな作品となりました。

トマ・カイエ監督『「もののけ姫」が念頭にあった…』

監督はメジャーな作品は本作が初めてのようですが、インタビューでは『もののけ姫』が念頭にあったと語っています。確かにコンセプトはかなり似ていますよね。こういうのって宮崎駿監督のコメントも聞いてみたいです、『動物界』を見たのかどうか…笑

♦︎ 「『もののけ姫』はずっと念頭にありました」フランスで観客動員100万人突破の大ヒット映画『動物界』の監督が語る「宮﨑駿の影響」 (現代ビジネスより)



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