世界的にヒットを飛ばした、イタリアの格差ラブコメディ
以前『青い珊瑚礁』にハマったときに、無人島ものをあれこれ探していて発見したのが、フィービー・ケイツ主演の『パラダイス』と本作『流されて…』。『パラダイス』は見ることができたのですが本作はレンタル屋に置いておらず、忘れかけていた矢先にゲオ宅配で発見。ゲオ宅配には本当にお世話になってますw ちなみに現在は、U-NEXTやHuluで視聴することができます(鑑賞時にご確認ください)
作品データ
【製作年度】1974年
【製作国】イタリア
【上映時間】116分
【監督】リナ・ウェルトミューラー
【キャスト】ジャンカルロ・ジャンニーニ、マリアンジェラ・メラート ほか
【鑑賞方法】U-NEXT、Hulu など
(鑑賞時にご確認ください)
あらすじ
無人島に流された男女の愛と性の極限を描いた、リナ・ウェルトミューラー監督の代表作。船旅の途中に遭難して無人島に流れ着いた上流階級の人妻・ラファエラとその使用人・ジェナリーノ。文明と隔絶された環境の中、やがてふたりの立場は逆転し…。(「キネマ旬報社」データベースより)
年齢制限は?
おそらくなさそうなので?どなたでもご覧いただけます。
レビュー ( 2013・03・05の記事に加筆 )
1、世界的にヒットを飛ばした、イタリアの格差ラブコメディ
『青い珊瑚礁』と『パラダイス』が思春期の少年少女を主人公にしたのに対し、本作では30代?の男女が主人公となっています。しかも上流階級の女性と使用人の男性という格差があり、そんな2人が無人島に漂着するのだから何か起こりそうな予感はプンプン。
なんだかエロティックなジャケットに、いわゆる大人のロマンスものなのかな~と思っていたら、全体的にコメディテイストでした(サムネイル画像の方がイメージに近いです)。これには意外だったのですが、逆に見やすくて面白かったです。公開当時は世界的にヒットを飛ばしたそうで、日本でも1978年に公開されています。
ちなみに今回、女性監督だったと知りちょっと驚いたのですが、それ以上に女性監督として初めてアカデミー監督賞にノミネートされた方なんだそう!女性でのノミネートは2024年現在までに6名しかおらず、2019年にはアカデミー名誉賞を受賞…って、こんなに凄い方だったんですね!
ちなみに無人島で立場が逆転というと、カンヌでパルム・ドールを受賞した『逆転のトライアングル』が本作と設定がちょっと似ているなぁと思いました。
マドンナ主演でリメイクも作られたが…
2002年には、ガイ・リッチー監督が当時の妻であるマドンナを主演に起用し『スウェプト・アウェイ』というリメイクも作られたのですが、ラズベリー賞を受賞してしまいました(・ω・)マドンナと結婚したばかりだったし、許してあげてください(?)
2、無人島への漂着と、立場の逆転
地中海を船旅で楽しむブルジョワな仲間たち。実業家夫人のラファエラは洞窟で泳ぎたいと言い出し、使用人ジェナリーノに無理矢理ボートを出させる。しかしボートが故障してしまい、無人島へと流れ着く2人…。
なんといっても見どころは、今まで散々ジェナリーノをこき使ってきたラファエラとの立場の逆転!やれスパゲッティが茹で過ぎだの、シャツが臭うから着替えろだの、船上では完全なる女王様気取りで見ているこちらもイライラするほど最悪の女性だったラファエラ。
そんな彼女に我慢し続けてきたジェナリーノは『ウスノロのカボチャ』という言葉をきっかけにとうとう島でブチ切れ、『…このメ◯豚が!く◯ばっちまえ、売◯が!』などと罵る場面はさすがに吹き出しましたw(今なら絶対にアウトのやつです)
自力でエビやウサギなどを捕まえては食料を確保するジェナリーノに対し、何の知識もなく空腹で弱っていくラファエラ。『…食いたければご主人様と呼べ!』と立場が逆転し、ことあるごとにラファエラが引っぱたかれたりします。このあたりのシーンも、笑えるところと、ちょっと殴りすぎじゃね!?と引いてしまうほどw(今なら絶対にアウトのやつです)
3、Sだと思っている女性ほど、潜在的なMの部分があるのかも…
さて、完全に立場が逆転した2人ですが、ラファエラはというとどっぷりジェナリーノに惚れ込んでいくではありませんかw
この直前に無理やり身体を奪われるシーンがあるにも関わらず、ですよ。今まで何不自由なく暮らしていた彼女にとって、野性味溢れる男性との出会いは新鮮で、そのギャップにやられてしまったのでしょう。なんだかんだで私も落ちるかもしれません(・ω・)(?)
しかしラファエラの変化ぶりは見ていて本当に面白すぎましたw 冒頭では『…このサイアクな女が主人公?見る気しねぇw』とさえ思ったくらいなのに、徐々に可愛らしく見えてくる不思議…。
いわゆるSな女性でも、状況次第では容易にMになってしまうということも言えるのかもしれませんね。むしろ自分ではSだと思っている女性こそ、潜在的に眠っているMな部分があるのかもしれません。今で言うツンデレ、みたいな?
こうして、男性からすると1度は憧れる(?)美女との服従生活が始まります。
4、女性のほうが現実的だった…な、シニカルな結末
何より驚いたのは、通りかかる船にも助けを求めず『あなたとこの島で暮らしたいから、船を呼ばなかったわ』とラファエラ。実は『青い珊瑚礁』でも、島の生活を受け入れ、助けを呼ばなくなるシーンがあったりします。こういうのって、島の生活に慣れると感覚が麻痺してしまったりして、現実世界に戻ることが考えられない思考になってくるのでしょうか…。
しかしジェナリーノは彼女の愛が本物か試すため、その後通りかかった船に助けを求め2人は救出されます。愛が本物ならば、また2人でこの島に戻ってくるつもりだったのです。
実は妻子がいたジェナリーノですが、妻子を捨てる覚悟で『またあの島で2人で暮らそう、手配した船で待っているから来てくれ』とラファエラに手紙を渡します。しかし結局ラファエラは姿を現すことはなかったという…。それでも、ラストのラファエラの表情からすると本当にジェナリーノを愛しているようにも見えましたが…。
嫁に罵られながらすごすごと家路へと向かうジェナリーノの姿はなんとも哀れでしたが、これはこれでクスっとしてしまう良いエンディングでした(笑)。
女性のほうはあの状況だからこそ『好き』というマジックにかかっていたのかもしれませんが、男性は本当に彼女を愛していたんでしょうね。だからこそ、彼女の愛を試すようなことをしたのでしょう。自身が助けを呼ばなければ、おそらくあのまま島での生活は続いていたでしょうに…笑
演じた俳優たちの、その後
ラファエラを演じたマリアンジェラ・メラートという女優さんは、2013年の1月にすい臓ガンで亡くなったようです。中尾ミエにも見えたりしたのですが、とてもスタイルが良い女優さんでした。ちなみに『流されて…』の2作目にも続投したようですが、やはり1作目のほうが評判は良かったようです。
ジェナリーノを演じたジャンカルロ・ジャンニーニという俳優さんは、最近ではダニエル・クレイグ版の007シリーズにも2作品ほど出演しているようです。ちなみに彼の実の息子が『スウェプト・アウェイ』の使用人を演じたようで、親子二代で同じ役を演じるってすごい!笑
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