当時なぜだか前売りがなく?レディースデーまで待って劇場鑑賞した本作。珍作ハンターでもある私でも、それまでに見たことのなかった展開に呆然…。数日引きずったのですが、こういう類いの余韻は初めてで妙に気持ちよく…(危)。巷の評価は(やはり)あまり良くはないですが、なかなか深い物語だとも思うんですけどね(・ω・)
作品データ
【製作年度】2008年
【製作国】カナダ/フランス
【上映時間】104分
【監督】ヴィンチェンゾ・ナタリ
【キャスト】エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー ほか
【鑑賞方法】Amazonプライム、U-NEXT など
(鑑賞時にご確認ください)
解説・あらすじ
『NOTHING ナッシング』などの奇才、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督によるSFサスペンス。人と動物の遺伝子を掛け合わせ、新種の生命体を作り出した科学者夫妻の心理に迫る。今まで見たことのない新種のクリーチャーの造形と、生命体創造という深いテーマを追求した物語に魅了される。(シネマトゥデイより)
年齢制限は?
R15指定なので、15歳以下の方は鑑賞することができません。
レビュー ( 2011・01・14の記事に加筆 )
1、波乱含みのレディースデー
正直ありがちな SFモンスターだと思って見に行ったので、こんなにドギツい人間ドラマを見せられるとは思いもしませんでした…w
科学者の夫婦クライヴとエルサは、人間と動物のDNAを配合させ、見事実験に成功。
そして見たこともない奇形の生物を生みだした。急速な成長により女性へと変貌した彼女に2人は『ドレン』と名づけ、その存在を隠しながら生活を続ける。
物語の前半は、ドレンの誕生と『幼少期』までの過程が描かれます。
本作の見所ともいえるこのクリーチャーが、今までに見たことのない例えようもない気持ちの悪さ!歩き回る様子は生理的嫌悪感で直視することができませんでした…(;ω;)
これ以上気持ちの悪いものが出てきたらちょっとマズいかも…と、不安になりながら鑑賞した冒頭…。
やがて幼少期になるとドレンにフリフリのワンピースを着せ、わが子のように接するエルサ。
ちなみにタイトルの『スプライス』とは『結合』の意。この後の展開を考えると、とても意味を持ったタイトルですw
レディースデーだったということもあり、そのお客さんの8割が女性。しかし鑑賞後の彼女たちのリアクションからすると、間違えて見てしまった人も多数いた模様w『CUBEの監督の作品なんだって~』などというノリで見に行ってはいけない代物だったのです。
2、珍シーンなのに恍惚シーン
しかし諸事情により、ドレンを廃墟と化した屋敷へと移さなければならなくなります。そしてここで、ドレンが『大人』になってからの展開が、まさに見もの。
なんとなく『予感』はあるものの、いやまさかね…(・ω・)という不安が的中。
今までに到底見たことのないような衝撃シーンで、見方によっては吹き出しかねない可能性も十分にあります。こういう類いのタブーってちょっと初めてで…w
夫が浮気した相手は『娘でありモンスターでした』って(ド直球)。
女性ならば、色々な意味で嫌悪感が半端ない(はず)なんですけどね。しかし私はなんだか、1周回って魅せられてしまったのです(?)
ドレンが羽を広げる姿にも、恍惚というか、もう目が離せないというか…。
左の彼女にCG加工を施しているそうですが、違和感なし!撮影時には坊主にしたようです。しかしドレンは、坊主&独特な顔立ちにも関わらず、妙な色香が出ていたのにも驚き…。
3、後半で、もうひと展開見せる
終盤の一気にホラー掛かった展開には、こんなにもサービスしてくれる作品だとは思わず私はとても楽しめました。
SF、サスペンス、ホラー、エロ、そして愛憎劇と、ヘビーな要素をこれでもかと盛り込みまくったにも関わらず、出来上がってみるとこれが、珍作とも傑作とも呼べる奇跡の結合を果たした本作。
紙一重のスレスレの線をいっているのですが、普通というよりは『最高』か『最低』のどちらかに極端に振られる作品な気がします。
『一部のマニアからは今後も語られそうな作品になりそうです』←なんて当時は言ってたんですが。その後、言うほどメジャーには?ならなかったですねw
公開から15年ほど経った今も(そんなに前なんだ!)こんなヤベぇ作品あんまないんですが…w
本作が好きなら、珍作の良作であるこちらも好きかも?
『スプライス』にちょっと似てる?『コールド・スキン』
『フロンティア』の監督が手がけた、2018年カリコレ上映作品。
気象観測員として離島にやって来た主人公。そこにはベテラン灯台守と、途中からモンスター(♀)1匹も参加(説明かなり端折ってます)。モンスター(♀)がニットを着ている姿はドレンを彷彿と。『スプライス』ほど直接的なシーンはありませんが、なんだか危うい雰囲気があります…。
4、3度目の鑑賞( 2023・11・05 )
劇場で鑑賞した4年後に、2度目の鑑賞。そして昨年、8年ぶり3度目の鑑賞をしたのですが…。
うーん、3度目はそこそこ楽しめたという結果に…(・ω・)ザンネン。この作品に関してはやはり、何も知らずに見たからこそ、衝撃(笑撃)があったのかなぁ!?と。
3度目はとにかくエルサにイライラ!
1度目のレビューでは特に言及していなかったのですが、3度目はとにかく、サラ・ポーリー演じるエルサにイライラして仕方なかったですね!
子供は欲しくないとか言っておきながら、ちゃっかりドレンには自身の遺伝子を使い、まるで本物の娘のように可愛がる。
しかしドレンが自分の思ったようにいかなくなると今度は手のひらを返し、非道な行動に。女の悪い所をすべて詰め込んだような人間でした笑。
そしてエルサに対比して、最初はドレンのことを反対していた夫のほうが彼女を理解し、人間的に扱う。そりゃドレンに傾いてしまうのも仕方ない
極め付けは、ドレンの性別が変わり今度はエルサが『女性として』襲われる、まさに新生物の特性を活かした展開。
さらに、ドレンとの子供を身ごもっていたという因果応報とも取れるラスト…。すなわちその子供が生まれてくれば、エルサからしてみれば、自身の子供でもあるけれど、孫でもあるということ…?(混乱)。
『スプライス』の続編とヴィンチェンゾ・ナタリ監督の現在
いつだったか、続編の話もあった気がするんですけどね?やはり巷での評判もあまりよろしくはないし、このままスルーかな…(;ω;)1作目の続きの物語ならばかなり気になるし、見たいですけどね!?
そしてナタリ監督といえば『イン・ザ・トール・グラスー狂気の迷路ー』というNetflix限定の作品が直近だと思うのですが、これがまぁ酷かったんですよね私的に…。原作はキングなのですが、草むらに入ったら出られなくなったという『CUBE』が草むらになったような話。
ただ売れてもなお、変な作品にも出演してくれるパトリック・ウィルソンには尊敬しかないです(・ω・)
5、出演者のその後
エイドリアン・ブロディ
彼と言えばやはり『戦場のピアニスト』ですよね。しかも、当時29歳でのアカデミー賞主演男優賞受賞は最年少で、未だその記録を破られていないんだとか!
その後は、シャマランの『ヴィレッジ』や『キング・コング』などの大作にも出演。
『ダージリン急行』からウェス・アンダーソン組の俳優となり、近年では『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(タイトル長!)『アステロイド・シティ』に出演。
Filmarksを見てみても出演作はザッと60作品ほどありますが、『戦場のピアニスト』以降は主演としてコレ!みたいな作品があまりない印象ですね…。
『スプライス』では、こんな役も演るんだなぁ!?と感心しましたし、彼にはちょっとトリッキーな役が似合う気がするのでw意味不明なホラー作品なんかにも出て欲しいです(切なる願い)。
サラ・ポーリー
私がサラ・ポーリーを初めて知ったのは『死ぬまでにしたい10のこと』。
その翌年には『ドーン・オブ・ザ・デッド』、そして『スプライス』とこのままホラー&珍作街道まっしぐらなのかと思いきや…近年ではもっぱら監督の人となりました!
しかも2023年には、自身が監督・脚本も務めた『ウーマン・トーキング 私たちの選択』がアカデミー賞脚色賞を受賞!こちらは記憶に新しいですし、私も鑑賞しました。
しかし今回調べてみると、2009年から監督業に進出しており『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』では、すでにアカデミー賞脚色賞にノミネートされていたんですね!?
こんなにも監督としての才能がある人だったとは…。まだ45歳と若いですし、女性ならではの視点でもっと良い作品を生み出してくれそうです。
2017年、ニューヨーク・タイムズに、ハーヴェイ・ワインスタイン他ハリウッドの女性の扱い方が、彼女が長年演技から遠ざかっている理由だという旨の論説を寄稿した。(wikipediaより)
彼女自身が彼から直接被害を受けたわけではないようですが、この事件に関しては、アシュレイ・ジャッドを始めとする有名女優が何人も告白していますし、実際にはとんでもない数の被害者がいそうですね…。
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