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当時話題になった、寺島しのぶが日本人女性としておよそ35年ぶりにベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した本作。なんといっても本作の見どころは、戦争に行った夫が両手両足を失って帰還するという、鬱マックスな設定にあるでしょう…。
作品データ
【製作年度】2010年
【製作国】日本
【上映時間】84分
【監督】若松孝二
【キャスト】寺島しのぶ、大西信満 ほか
【鑑賞方法】U-NEXT、Hulu など
(鑑賞時にご確認ください)
あらすじ
第2次世界大戦中の日本。シゲ子の夫・久蔵にも赤紙が届き、勇ましく戦場へと向かったが、戦争から戻った久蔵の顔は無残にも焼けただれ、四肢を失っていた。村中から奇異の目で見られながらも、多くの勲章を得た久蔵は「生ける軍神」として崇められ、シゲ子は戸惑いながらも久蔵の尽きることのない食欲と性欲を埋めていく。(映画.comより)
年齢制限は?
R15指定なので、15歳以下の方は鑑賞できません。
レビュー ( 2011・09・04の記事に加筆 )
1、わりと想像範囲内であった内容
内容が内容なだけに鑑賞するタイミングがなかなか訪れなかったのですが、ようやく『そのとき』が訪れ、先日鑑賞しました。
ただ、意外や意外?私的には良くも悪くもわりと想像範囲内で、そこまでしんどい(!)という展開ではありませんでした。
とは言えもちろん見る人を選ぶ題材ですし、スカっとするお話ではないですが…。
本作、江戸川乱歩の『芋虫』をモチーフにしたらしく、原作も気にはなっているのですがまだ未読です。
江戸川乱歩の作品ってストーリー的にはかなり私の好みだったりします(・ω・)
2、シゲ子の地獄の日々の始まり
戦地から帰還した久蔵は四肢が無く、また顔も焼けただれ、耳もろくに聞こえずまともにしゃべることすらできない。
その夫を献身的な介護で支えるのが妻、寺島しのぶ。
久蔵の実の父親でさえ『こんな姿で帰されたって…これで生きてるって言えるのか-。シゲ子さん(面倒を看てくれる人)がいて良かったよ…』と、思わずその本音が漏れてしまうほどの凄惨さ。
村の者たちも内心は妻のシゲ子に同情しているはずですが、『ウチなんて骨になって戻って来たっていうのに、生きて帰って来れるだなんてすごいことだよぉ~』などと言い、皆、久蔵を『軍神さま』と崇める。
そして肉の塊と化した久蔵ですが、食欲、性欲だけは旺盛。
自分の食事まで欲しがる夫にそれを与え、求められれば全ての要求に応じる…。ここから、シゲ子の地獄の日々が始まります。
3、明かされる久蔵のキャラクター
物語も終盤になると、実は戦地で女性を暴行し虐殺していた久蔵が、自らの罪に苛まれるようになってきます…。
さらに、戦争へ行く前は幸せな結婚生活を送ってきたと思われていた夫婦ですが、実は毎晩久蔵による暴力があったことも判明。
『子供も産めないなんて、この役立たずが!』と罵られていたシゲ子。
久蔵のキャタクターが明かされると、現状に同情も出来なくなってくるしで、一体なぜこんなキャラクターにしたのだろうと…。
シゲ子が『毎晩私を殴っていたくせに!』と夫を殴るシーンがあったので、ここで立場が逆転するのか?とも思ったのですが(期待)特別そういう展開にもなりませんでしたし。
あれだけ毎晩殴られていたのならば、立場が逆転したほうが展開的には動きが出て面白かったような気もします。
4、結末
ラストは結局、久蔵が『芋虫(キャタピラー)』さながらに外に這い出し、自ら田んぼに落ちて命を絶つという-。どういうオチをつけるのだろうと思っていたのですが、やはりこうなるのですね…。
正直、ここまでエグい設定にしたのだからもう少し切り込んだ演出や意表を突く展開があっても良かったかなぁという気はします。
しかし、戦争がひとつの家庭をここまで変えてしまったという意味では、十分に戦争の恐ろしさを知ることが出来る反戦映画かと。
寺島しのぶは、受賞するのも納得です。脱ぎっぷりもいいのですが、彼女のキャラクターのせいかあまりいやらしくは感じませんでした。
久蔵を演じた大西伸満は、本作の数年後に真木よう子と共演した『さよなら渓谷』が個人的にかなり好きで、私のこの年の年間ベスト3に入るほどに。なかなかヘビーな役どころが多い俳優さんですが、近年はどちらかと言うと脇役で出ている感じでしょうか。
ある意味作品以上に恐ろしかったのが、元ちとせのテーマ曲!
『死んだ女の子』という、自らが亡くなった視点で書かれた詞の歌なのですが、これがもうメロディも詞も怖すぎるw!
エンディングでこれが流れ始めたとたん、映画の内容が吹き飛ぶくらい悪寒に包まれました…(;ω;)
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