【サユリ】評判が良いのには仕掛けがあった!【ネタバレあり】

サユリ
(C)2024「サユリ」製作委員会/
押切蓮介/幻冬舎コミックス

とにかく評判が良く、ホラー好きとあっては本作を見ないわけにはいきません!このジャケットから正統派ガチホラーだと思い込んでいたので、中盤でまさかの展開にビックリw(ジャケット右側が老婆の霊だと思い込んでいたのは内緒)ゼロの状態で驚きたい人は、正直あらすじも予告も見ずに、鑑賞してほしいです。そういえば、本作なぜだか年配女性の1人客が多かったです(・ω・)今年は『あのコはだぁれ?』に然り、私的にJホラーの当たり年です。

作品データ

【製作年度】2024年
【製作国】日本
【上映時間】108分
【監督】白石晃士
【キャスト】南出凌嘉、梶原善、根岸季衣、近藤華 ほか
【鑑賞方法】劇場公開中
(鑑賞時にご確認ください)

あらすじ

念願の一戸建てに引っ越してきた神木家。夢のマイホームでの生活がスタートしたのもつかの間、どこからか聞こえる奇怪な笑い声とともに、家族が一人ずつ死んでいくという異常事態が発生。神木家を襲う恐怖の原因は、この家に棲みつく少女の霊「サユリ」だった。(映画.comより)

対象年齢は?

R15指定なので、15歳以下の方はご覧になれません。

レビュー ( 2024・08・30 )

1、前半は正統派ホラーの流れ

サユリ
前半の流れでいっても面白いホラーにはなりそう
((C)2024「サユリ」製作委員会/
押切蓮介/幻冬舎コミックス)

引きこもりで暴力的な娘におびやかされている、ある一家。何か良からぬ事が起こったらしいその家に、10年後、仲の良い家族が引っ越してくる-。

まず最初に、異変が起こるのは長女。体調が悪くなってくると自我が保てなくなり、暴力性を帯びてくる。そしてなんと、一家の父親を筆頭に、祖父、次男、長女、母親が次々と非業の死を遂げる

家族が家族を手に掛けたり、自害していく様子はかなりしんどく、特に可愛らしい弟くんがお姉ちゃんに突き落とされる描写や、お母さんの自死シーンはかなりキツかった…(;ω;)

とても仲の良かった家族だからこそ、こんな残酷な死に方をするギャップはかなり応えました…。元々7人もの大家族であったのに、なんと残ったのは認知症が進んでいる祖母と、長男の2人きり

かなりの鬱展開に、ここから一体どうなるの!?と思っていたら…

家の中で電気が消えたと同時に人物が消える消失演出は、電気が点いたときに一体どこから何が出てくるのかが分からず、かなり身構えました(!)

2、こんなジャンルシフト見たことない

サユリ
このおばあちゃんがまさかあんなことに…笑
((C)2024「サユリ」製作委員会/
押切蓮介/幻冬舎コミックス)

認知症気味のおばあちゃんが家族を亡くしたことにより、まさかの覚醒

自身の息子が亡くなったときに1度覚醒しかけましたが、あまりの惨劇に開花したんでしょうね!笑 そして人間性だけでなく、素行やファッションまでもが完全なる別人格になるのがスゴい。

元々は太極拳の師範であったというおばあちゃん。精神力の強さと、ユーモア溢れる暴力性とのバランスが絶妙なキャラクターに。

『命を濃くしろ!それがサユリに立ち向かう源となるんじゃ!』と孫に教えを説く、スポ根マンガのような祖母と孫のバディものが爆誕w

ジャンルは、ホラーから復讐コメディアクションへ、おばあちゃんが脇役からメインへと躍り出ます。突如のジャンルシフトには、一瞬『…へ?』となりました(・ω・)

しかし『元気ハツラツ!…』のあとは、どうしてもあの台詞でないとダメだったのでしょうか。 ここは人によってちょっと感じ方が分かれそうな…私はまぁまぁギリでしたw

3、サユリの正体

サユリ
サユリのまさかの生い立ち…
((C)2024「サユリ」製作委員会/
押切蓮介/幻冬舎コミックス)

家族を次々と死に追いやった『サユリ』

冒頭では、大きな女性と少女『2人の霊』が存在しているのかと思ったら、そういうことだったんですね…。絶対的『悪』だったはずの彼女の素性が明らかになったとき『…うわぁ、そっちだったか…』と。

しかしサユリの父親も、それまでは普通の人?っぽかったのにいきなりあんなに堂々とやるもの(!?)母親に助けを求めるも、まさかの態度。

うん、あんなことがあったらそりゃこうなるよね…。それでも、母親だけは殺せなかったんだね…。

大きなサユリのドス黒かったものが剥がれ落ちて、小さく無垢だった頃のサユリが思いっきり泣くシーンは、こちらもなんだか涙が…。

正直、このテの真相は珍しくないかもしれませんが、本作のリアルな描写が妙に説得力を帯びてました。場内でも泣いている人が。

大きなほうのサユリは、特殊メイクをして作り出していたらしいです。

4、愛おしいキャラクターたち

住田役の女優さんが可愛い子でした
((C)2024「サユリ」製作委員会/
押切蓮介/幻冬舎コミックス)

本作を語る上で欠かせないのはやはり多彩なキャラクターたち。家族も皆いい人たちで、前半は彼らのホームドラマとしても楽しめたました。

ある意味主人公だった、おばあちゃんを演じた根岸季衣さんのオン⇔オフの演技はとにかく素晴らしく、間違いなく彼女の代表作になりましたね。

昔からよく見る女優さんで、チャキチャキとしたおばちゃんのイメージだったんですが、いつの間にかこんなおばあさんの役も演じるようになったんだなぁと感慨深いものがありました。

そしてたくさんの家族の犠牲と引き換えに、神木家の新たなメンバーとして加わりそうな則雄の同級生である住田。青春ものにありがちな不自然な脚色をせず、等身大の中学生として描かれている2人に好感が持てました。

車椅子に乗るおばあちゃん、それを押す則雄、横には住田の3ショットって、こんなに微笑ましいエンディングのホラー映画見たことない!笑

覚醒後のおばあちゃんのファッションは、ミュージシャンのジャニス・ジョプリンという方をイメージしたんだそう。

5、2つの家族の対比を描いた物語

サユリ
ホラー要素以外も楽しめる!
((C)2024「サユリ」製作委員会/
押切蓮介/幻冬舎コミックス)

『コワすぎ!シリーズ』ほどコアなファン層に向けた作風ではなく、白石晃士・監督作品が初めてでも見やすいテイストになっていると思います

元々、ホラーにコメディ要素を求めておらず、それどころかコメディそのものが苦手な私…。これまでの白石監督作品では正直ハマらないものもあったのですが、本作は家族愛や青春など、愛の描き方が良かったのがとても楽しめた要因ですね

ホラー好きはもちろんのこと、ホラーが苦手な人でもこんなホラー映画もあるんだ!ということを知って欲しい笑。

前半はちょっとしんどい描写もありますが、家族愛、青春、ユーモア、ミステリーなど、盛り上げ、引っ張る要素がいくつも詰め込まれています。冒頭からまったく飽きさせないのでテンポも良いです。

シリアスから一転、コメディテイストで進みますが、サユリの真相が明らかになる過程では再びシリアスに引き戻す。

結局は、愛を掴むことが出来なかった家族と、愛によって打ち勝つことが出来た家族の対比を描いた物語でもあるんですよね(家族はたくさん亡くなってはしまったけれど…)。

『元気ハツラツ〜』のくだりがなければ、家族でも気兼ねなく見られそうなんですがw

こんな作品は見たことがなかったし、Jホラーにまだこんなポテンシャルがあったのだと感動すら覚えました。新たなムーブを起こした白石監督は、今後のJホラー界を変える存在になりそうですね。



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