【ニルスのふしぎな旅】最終回だけでも泣けた…劇場版ラストの破壊力がすごい

正直に言うと、劇場版は全52話のTVシリーズを、約90分に再構成した“ダイジェスト版”でした。ニルスとアッカ隊長の深い交流があまり描かれないまま感動の別れシーンに突入するため、「え、まだ“温まってない”んですが…」と戸惑う方もいるかも（笑）。それなのに——ラストでは、しっかり号泣(・ω・)「なんとなく懐かしさを味わいたい」「どんな作品だったか、あらためて思い出したい」そんな方には、短時間でざっくり追体験できるちょうどいい1本かもしれません。

作品データ

【製作年度】1982年
【製作国】日本
【上映時間】97分
【監督】鳥海永行、安納正美、押井守
【声のキャスト】
小山茉美、山崎唯　ほか

解説

NHKで放送された「ニルスのふしぎな旅」の劇場版。TV版とほぼ同じスタッフで制作された幻の劇場未公開作品。…が、「制作から実に30余年の2015年1月、初の劇場上映（1月31日から2月6日まで、渋谷アップリンク）が実現！（wikipediaより）」シナリオはテレビ版のダイジェストで、映像の大半を新たに作り直した。

あらすじ

スウェーデン南部の農村に住むいたずらっこのニルスは、ある日、妖精との約束を破ったために、魔法で体を小さくされてしまう。しかし、それがきっかけで動物と話ができるようになり、ガチョウのモルテン、ハムスターのキャロットと共に、ガンの群れの一員として旅立つことに。ニルスは冒険を通して、勇気や責任感、協調性を学んでいく。（バンダイチャンネルより）

年齢制限は？

もちろん年齢制限はありません。ただ、劇場版には結構怖いエピソードも含まれているので、苦手なお子さんもいるかもしれません…。

どこで見れる？

	アニメ （全52話）	劇場版 （97分）
Amazon プライム	●	ー
U-NEXT	●	●
Netflix	ー	ー
hulu	ー	ー
Disney+	ー	ー
ゲオ宅配 レンタル	●	●

レビュー　（ 2010・08・09の記事に加筆 ）

１、今こそ見たいニルスのふしぎな旅

鳥と旅したら泣けすぎた件…少年が変わる夏

『ニルスのふしぎな旅』を初めて見たのは15年ほど前。
私が住んでいた地域ではちょうど再放送が流れていて、なんとなく見ていた…という程度だったのですが、それでも強く印象に残っている作品でした。

オープニング主題歌もすごく有名ですよね。自身の保育園の運動会で使われていた記憶があります。

原作はノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの女性作家、セルマ・ラーゲルレーヴによる児童文学。教育目的で書かれた“地理学習用ファンタジー”という背景もあり、世界的に評価された名作です。

しかし「1906年に第一部、1907年に第二部刊行（wikipediaより）って、こんなに昔のお話だったのですね…！？

あらすじは、いたずらっ子で動物をいじめていたニルスが妖精の魔法で小人にされてしまう。魔法により動物たちと会話をすることができるようになったニルスは、ガンの群れたちとともに旅をすることに。

旅のなかでニルスは、群れの長であるアッカ隊長から、多くの命と触れ合いながら、動物愛護や自然との共生といった“人として大切なこと”を学んでいきます。

少年が自らの過ちと向き合いながら変わっていく…そんな成長譚でもあるのです。

※このレビューは、あくまで劇場版がメインとなります。アニメ版で描かれていた部分に関しては言及していないので、ご了承願います。

２、全話見てなくても最終回では号泣…

↓ここからは、15年前の感想になります。当時はまだブログも始めたばかりで、こんな短い感想を残していました。

全52話をすべてしっかり見ていたわけではなかったものの、最終回のアッカ隊長との別れのシーンではもう号泣…(；ω；)

魔法が解け、人間の姿に戻ったニルスに、もう動物たちの言葉は分かりません。
アッカ隊長も、『ガぁ～、ガぁ～』と悲しそうに鳴くばかり…。

もちろん人間の姿に戻ったニルスのことを喜んではいると思うのですが、アッカ隊長があまり嬉しそうな表情を見せないのがまた泣けるんですよね－。

やはり、寂しそうなんです…(；ω；)

そして、わりとサラリと去っていくのも印象的です－。
まさか、前日に会話を交わしたのが最後になるなんてぇぇ（涙）。

ニルスが理解できなくてもいいから（？）アッカ隊長たちのセリフはせめて字幕で出してほしかった…。

育ての親との別れよりも、アッカ隊長との別れのほうが嫌…（！！）ニルスの”育ての親”は、もはやアッカ隊長なわけですし…(・ω・)

ぶっちゃけ『（このまま小人のままでいておけよ、ニルス！）』と思わずにいられません。

↑最後の一文に、当時最も言いたかったことが詰まっている気がします笑。

３、劇場版で思い出再燃！…しかし…

劇場版って何？ザックリ解説

先日『野生の島のロズ』を鑑賞したのですが、これによって思い出したのが、まさに『ニルスのふしぎな旅』。

ロボットである”ロズ”と、ガンのひな鳥である”キラリ”との親子のような絆。たくさんの森の動物たち。山火事など、ニルスに通ずるようなモチーフがかなり多いです。

そこで、久しぶりにニルスのことを調べてみると、なんとU-NEXTにニルスの劇場版があることが判明！

1話25分×52話＝合計約1300分に及ぶTVシリーズを、わずか97分に凝縮したダイジェスト劇場版。

物語の要所は押さえつつも、当然ながらカットされたエピソードも多く、オリジナル版を知る人にとっては「ここは見たかった！」と感じる場面もあるかもしれません。

そしてやはり今回知ったのが、ニルスの監督である3名のうちの1人になんと”押井守”の名が！！wikiによると、彼と別監督の共同エピソードや、彼単独での監督のエピソードもありました。

やっぱりかなり削られていた…でも泣ける！

ただ、劇場版はさすがに端折りすぎでした…。
最も肝心な、アッカ隊長とニルスの交流シーンが思いのほか少なく…(・ω・)え。

このエピソードにこんなに時間を割くなら、ここはアッカ隊長との交流シーンだろ！とツッコミたくなるようなシーンもw

残り時間をチラチラ見ながら、「…え、あと十数分で終わり！？ちょ、アッカ隊長とのエピソード、もっとじっくり見たかったんですけど！？（泣）」

まだ”温まっていない”のに泣かせに来るのやめて…。

…なんて心配していたのですが、それでもやっぱり！アッカ隊長との別れでは号泣(・ω・)

結局、この作品ってラストシーンだけでもしっかり泣けるんだな？逆にすごくね！？となりました…。もちろんこれには、話の大まかな概要を知っているという前提があるわけですが。

どんな作品だったか、改めて思い出したいという方は…

劇場版（97分）とアニメ版（全52話）どちらも見れるのはU-NEXTだけ◎

４、いま見返して気づいた点

意外と淡白なニルスの両親

またこれは”対比”のためにあえてそうしているのでしょうが、愛情深いアッカ隊長に対し、なんだか愛情が希薄にも見えるニルスの実の両親…笑　ニルスの捜索願いとか出してたんでしょうか（生々しい）。

両親の登場シーンも、冒頭とラストくらいしかないので、まぁ仕方ないといえば仕方ないですが。

にしても、旅を終え、半年以上ぶりに自宅に戻ってきたニルス。
両親との感動の再会を期待していた私からしたら、ニルスの父親の『…こんなに長いこと、何をしていたんだニルス』に…リアクション薄っ！

動物たちと会話できる能力がすごい

日本のディズニーアニメと言わんばかりに、たくさんの動物たちが出てくる本作ですが、やはり動物たちと会話ができるという能力が、もう本当～にうらやましい！！

動物と会話ができたら「世界がとても広がる」のだということが、このアニメからもよ～く分かります。

具合が悪い動物に、どこが悪いのか話を聞くことができるのでとっても便利ですし、飼っているペットが考えていることが分かるとかサイコーです▼・ω・▼

なかでも、ニルスのペットであるハムスターの”キャロット”がとにかく可愛くて、人間に戻ったニルスがキャロットと会話できなくなってしまったのも、地味にこたえました…(；ω；)
今後も会話ができないまま一緒に暮らすとか、私なら拷問すぎます…（嗚咽）。

５、ニルスのホラー回と哲学回が凄い！

アニメ版『ニルスのふしぎな旅』には、子ども向けとは思えない“攻めた話”が紛れ込んでいます。

今回はその中から、劇場版に含まれているホラー回の第11話と哲学回の第14話をピックアップ。14話に関しては、あまりに印象深かったため、今回唯一アニメ版を見返しました。

第11話「あるく銅像」

劇場版にも入っている「あるく銅像（アニメ11話）」というエピソード。ニルスのなかではおそらく1番のホラー回で、大人が見てもわりと怖い。笑

スウェーデンの港町にやってきたニルスたち。夜中に”キャロット”を連れて街に繰り出すニルスだが、なんと突然銅像が歩き出し、ニルスたちを追ってくる！というストーリー。

人ひとりいない静かな夜の街。銅像がのっしのっしと歩く振動により、ニルスと小さなキャロットが飛び上がりながら、ただただ逃げ続けるという。

実際に“幼い子が見たら普通に泣く”レベルで怖く、人形劇ホラーや都市伝説系アニメが苦手な人にはトラウマ必至かも…！

一応、「銅像の正体」は明かされ、切ないお話でもあるのですが…うん、でも、普通に怖いからww

第14話「月夜に浮かぶ幻の街」

こちらは劇場版には入っていないのですが、ニルスの中でも印象的な一話として挙げたい名エピソード。U-NEXTでも配信されているので、アニメ版で視聴可能です。

民たちが欲に目がくらみ、神の怒りを買い海底深くに沈められてしまった街。

ただし、100年に1度だけ“生き返るチャンス”が与えられ、その条件とは…「誰かがひとつでも、この街で買い物をすること」

…なんだこの神話的で、かつ現代的な話は！？という驚き。

買い物を勧める住民たちの様子はどこか異質で、悲しさと不気味さが入り混じった不思議な空気が漂っています。

「ある条件を満たせば、元の姿に戻してくれる」
…よく考えると、ニルスも「”過ちを正す”というニルスの成長の物語」なんですよね。

このエピソードも、そんな作品の“本質”がにじんでいる気がします。短編ながら非常に印象深いお話です。

セリフに「殊勝」などの言葉が出てくるあたり、子どもにはやや難解かもしれませんが、むしろ大人になった今だからこそ、じんわり刺さるエピソードとも言えます。

６、たまには童心に返ってみては…

今回改めて思ったのは、「名作ってやっぱり、ラストだけ見ても名作なんだな…」ということ。

むしろ、今のほうが、刺さるポイントが変化していることにも驚かされました。

“童心に返る”って実はすごく難しい

「童心に返ることができるのは、大人だけ」…よく言われる言葉ですが、今回の『ニルス』を観てそれを実感。

本作には、アドベンチャー、友情、親子の絆、自然との共生など、あらゆるテーマが“さりげなく”織り込まれています。

そしてそれらが、押しつけがましくない優しさで描かれているのが魅力です。

今見返してみると、ユーモアも演出もどこか牧歌的。でもその中に「今の社会が忘れてしまったもの」があるような気さえします。

「大人になって観たからこそ泣ける」作品

当時ブログを書いていたときは、こんなふうに長く語ることはできませんでしたが、今は、あの頃と変わらない感動が、むしろ深く、温かくなっていました。

最近レビューした『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』もそうでしたが、“大人だからこそエモく感じる”作品って、ありますよね。『ニルス』もまさにその1作でした。

７、おまけ：まさかの実写版が！笑

劇場版を見ているとき『（…アッカ隊長は、実写でやるならシガニー・ウィーバーだよな）』とか勝手に思っていたのですが(・ω・)（トリのほう？）

…まさかの「ニルス実写版」が本当に存在してました。しかも2011年製作って、意外と最近じゃないですか…！笑

この実写版は、ドイツとスウェーデンの合作映画で、前編・後編に分かれた構成。合計184分というなかなかの大作です。

「ニルスデカくね…？」と思ったら、どうやら原作設定では14歳だった様子。（アニメ版だともっと幼く見えたのでびっくりでした）

モルテン（ガチョウ）の再現度は…まぁまぁリアル。ですが、あのアニメ版のモルテンの“丸っこさと可愛さ”とはだいぶ雰囲気が違う感じです笑

現在、配信はされていませんが、Filmarksでは★3.3とやや評価は控えめ。（以前はAmazonプライムにもあったようなので、今後再配信の可能性はアリ）

感想を見てみると…

• 「合成はよく出来ている」
• 「動物の口パクがうまい」
• 「動物たちの演技がすごい」

など、“動物映画としての観賞ポイント”が多めの印象で、かなり興味が湧きました(・ω・)

好みは分かれそうですが、「ニルスが実写になるとこうなる」という驚きは間違いなく体験できそう。気になる方はぜひ調べてみてください！

実写版はゲオ宅配の無料お試しで借りることができます◎

ニルスの劇場版も、アニメも。
どちらもU-NEXTで体験できます◎