
子どもたちの集団失踪という不穏なテーマに、神秘的すぎるジャケット…。でも実はこの作品、「子どもがなぜ消えたのか」を追う物語ではありません。失踪理由が明かされた瞬間、思わず「…え?」と固まる人もいると思います。本番は、“理由”が分かったその後の地獄と狂気。そして最大の衝撃は、まさかのラスト10分。グロいのに爆笑、怖いのに爽快。感情の座標がバグるほどの怒涛の映像体験でした(・ω・)
作品データ
【製作年度】2025年
【製作国】アメリカ
【上映時間】128分
【監督】ザック・クレッガー
【キャスト】ジョシュ・ブローリン
ジュリア・ガーナー ほか
あらすじ
舞台は静かな郊外の町。ある水曜日の深夜2時17分、子どもたち17人が突然ベッドを抜け出し、暗闇の中へ走り出したまま姿を消す。消息を絶ったのは、ある学校の教室の生徒たちだけだった。なぜ彼らは、同じ時刻に突如として姿を消したのか。疑いの目が向けられた担任教師ガンディは、残された手がかりをもとに集団失踪事件の真相に迫ろうとするが、この日を境に不可解な事件が町で相次ぎ、やがて町全体が狂気に包まれていく。(映画.comより)
年齢制限は?
R18指定なので、18歳以下の方はご覧になれません。
どこで見れる?
11月28日(金)より劇場公開中(上映館が少ないので、鑑賞時にご確認ください)
レビュー ( 2025・11・28 )
1、海外でも話題!アカデミー候補に?
今年はホラー映画が熱い
今年は『サブスタンス』がホラー映画として異例のアカデミー賞ノミネートを果たして話題になりましたが、本作『WEAPONS/ウェポンズ』も、海外のアカデミー予想サイトでは作品賞・監督賞・脚本賞の候補として名前が挙がっているようで。
特に”叔母”演じるエイミー・マディガンの怪演には「助演女優賞もあるのでは…?」という声も。
監督の前作『バーバリアン』も、これまでに見たことのないような変化球のシナリオが面白かったので、個人的には年内最後のホラー期待作として、劇場へ足を運んだのですが…。
…確かに面白かったです!面白かったのですが…「想像していた類いの面白さとはちょっと違った」というのも事実で。
個人的には、全編シリアスのガチ怖でも良かったです……が!ラスト10分の衝撃 & 笑撃はやはり大きく、こんな映像体験は初めて。
とんでもないものを目の前にぶちまけたあと、スッ…と去っていかれたような“シュールすぎる余韻”で、一気に高評価へと跳ね上がりました…笑。
あらすじ・複数視点のストーリー
一夜にして、ある小学校のクラスの子どもたちが、一斉に失踪する。
翌朝、教室に姿を見せたのは”アレックス”ただ1人だった。
また、失踪した全員が午前2時17分に家を出ていたことも判明。
果たしてその時刻、彼らに一体何が起きたのか。そして、どこへ行ってしまったのかー。
- 担任のジャスティン(ジュリア・ガーナー)
- 学校の校長
- 警察官
- 息子が消えた父親アーチャー(ジョシュ・ブローリン)
- 薬物中毒の若者
- アレックス
物語は、同じ時間軸を6人の視点から章立てて描かれ、徐々に失踪の謎へと迫っていく構成となっています。
このテの構成は「コレがココと繋がっていたのか!」という答え合わせ的な気持ちよさもあるので、評価が高い作品も多いですよね。
また、物語の序盤から6〜7割ほどはミステリードラマの様相が強く、ホラーとは少し離れたところへ行ってしまいそうなエピソードも…。
2、まさかのオチに、そっち…!?
サスペンスのなかでも、失踪系は特に大好物の私。大人の失踪も好きですが、子供の失踪というのがたまらない(映画の話です)。
ジャケットの、子どもたちが走っている“アート的で神秘的な気味悪さ”からも、勝手に「未知の存在?超常?神話?解釈系?」と、勝手に深読みモードに入っていたんですよね。
「最近流行りの、謎をそれとなく残し、個人に判断を委ねるタイプかな?」とさえ思っていたので、まさかの“めちゃくちゃしっかりと動機のあるタイプ”で、軽くズッコケました…。
子供たちの失踪の原因が、こんなにも“人為的”かつ具体的な儀式で……それも、ババ「”叔母”の魔術」だったとは………(・ω・)(私の期待神秘?を返して)
正直、コレが分かった瞬間は「……おい」と思いましたが。
物語の方向性が一気に定まると「まぁ、これはこれで…」から、どんどんと勢いを増し…!
ラストで、監督の「なるほど!コレをやりたかったのか!」が判明すると、もうニヤニヤが止まりませんでした。
3、叔母の正体は”魔女”だった…?
延命のために“純粋なエネルギー”を求めた可能性
叔母が儀式に手を染めた理由として一番自然なのは、彼女自身が重い病を抱え、肉体の衰えをどうにか止めたかったという背景です。
作中でも、ほぼ髪の毛は抜け落ち、明確に“衰弱した身体”が描かれていました。
そして、儀式に必要なのが“純度の高い生命力”だと考えると、なぜ子どもばかり標的になったのかも説明がつきます。
叔母は魔術により、同時刻に子供たちを集め、家の地下に”隠して”いたのです。
原色メイクと異様な存在感
叔母・グラディスの奇抜なウィッグに原色メイクは、まるでピエロを思わせるようなコントラストの強さ…。
ピエロって表情が一切読み取れず、 “笑顔なのに怖い” “悲劇と喜劇の境界線” という不気味さで、ホラー映画でもテッパンの恐怖モチーフだったりします。
人間の皮を被った異形 + 儀式のために“演じている”道化 という二重構造は、叔母だけ“異界の存在”として視覚的に区別されているのかな?とも。
また、末期の病を患っていた叔母は、 派手すぎるほどのメイクで病の痕跡を隠し、「弱者」ではなく「支配者」に見せていたのかもしれません。
魔術の一部としてメイクをし、自分の肉体を儀式仕様に“仮装”。人工的で、“人ではない皮”を被っているようにも思えました。
人間を“武器化”する力と支配構造は”魔女”
さらに、彼女の“支配力”も異常です。大人も子どもも理性を奪われ、まるでプログラムされたように動かされてしまう”武器”。
この規模の支配力が、単なる言葉や心理操作だけで成立するとは正直考えにくいんですよね…。
大人たちの“判断”や“恐怖”までも完全に消し去っていた点を考えると、意志のレベルそのものを直接書き換えるような“外的な力”が働いていたと考える方が、自然。
また、家そのものが儀式空間として機能し、境界(白い線)を越えた瞬間に大人たちが自動的に“襲撃モード”へ切り替わる点も、人間の手作業ではなく“魔術システム”の動きに近いかと。
似た現象で”催眠”があります。催眠は人によって効き方が違ったりもしますが、作中では全員同時に同じ現象が起きます。
こういった複数の要素からも「人間ではなく、儀式を操る“魔術的存在”だった」と解釈するほうがしっくりきます。
とはいえ、映画は明確に“魔女”と断言していないため、あくまでも“人間から逸脱した魔女的存在”という立ち位置で描かれていたと感じました。
4、多彩な恐怖演出とグロ描写
“楽しそうなのに怖すぎる”走り方
本作は、ジャンプスケアや恐怖演出など、バリエーションも豊か。
ジャケットにもなっている、「操られた人たちが両手を広げて走る」あの動き(しかも、相当速いスピード)は象徴的なシーン。
個人的には、本作の中でもトップレベルに“ゾワッ”とした瞬間でした。
自らの意思ではないのに、身体だけが“無邪気な喜び”を表現している矛盾が、生理的にバグるんですよね。人間が最も苦手とする“不気味の谷”そのもの…。
子どもだけならまだしも、校長だけは…見ちゃいけないものを見たような…怖いけど笑おうか迷いました(・ω・)
叔母の魔術が子どものエネルギーを使っているタイプなので、校長の動きも“子どもの無邪気さ”をコピーしてああなってしまったのでしょうか…?
しかも彼の初登場シーンは、顔が血まみれで目も異様に血走っており「…いずれゾンビになるのか!?」と思ってしまうほどの衝撃的ビジュアル(彼がなぜ血まみれだったかはその後に明かされ、なるほど…とw)
さすがのR18だった…
人間に見えて、中身は人間ではない「異形系ホラー」も大好きな私。
『イット・フォローズ』に出てくる、無表情でずっと歩き続けてくる「ソレ」がまさにこれに当たりますが、本作でも、操られている人物の「中身空っぽ感」が本当に恐ろしいです。
アレックスの両親の、人形のような空虚な表情でテーブルの前に座り続ける姿。
またR18ということで、そこそこグロ耐性があっても「(……イッタ!!!)」と力が入るシーンも。
自身の顔面「高速フォーク刺し」や「ピーラーで顔面削ぎ」には、本当に目を背けたくなりました…。
しかも、両親の奇行をアレックスが必死で止めるという(;ω;)(やめたげて…)。
5、ラストのブラックユーモアが爽快!
すべてはラストのために…
アレックスが結界(白い線)を越えた瞬間に、彼の両親が“襲撃者”へ切り替わる描写は、完全に『シャイニング』。
本来“守る側”であるはずの親が、儀式の秩序から逸脱したアレックスを“排除対象”として扱うようになります。
”ゾンビ化”してしまった両親から間一髪で逃れ、家中を逃げ惑うアレックスとの攻防はヒヤヒヤ!!
しかしそんな中、叔母が行っていた儀式を見ていたアレックスは、叔母の髪の毛を使い、今度は襲われる対象を叔母へとチェンジ。
そこから、地下で”抜け殻状態”で監禁されていた子どもたちが覚醒し、叔母が築いた支配構造が逆流するように崩れ始めるのです。
グロいのに爆笑、怖いのに爽快!
とにかく本作の真髄はラスト10分と言っても過言ではありません。
ターゲットが”叔母”となり、子どもたちは一斉に覚醒。叔母めがけて、それはもう、弾丸のように向かってきます!笑
ここまで積み上げてきたエピソードがここへ集約されていたのか!という、潔いほどのカタルシス!
“グロい!爆笑!怖い!爽快!”が幾度も繰り返され、観てる側の感情が追いつかないレベルで忙しい。ホラーなのに肩揺れるほど笑った瞬間なんて、正直あんまり記憶にありません…w
特に衝撃だったのは、ガラス窓を何枚もブチ破りながら叔母を仕留めにかかる子供たちの勢い。子供視点でのカメラワークの躍動感に「コレ、なんのアクション映画?」。
もうシュールすぎて、子どもたちが可愛いやら怖いやらで、よくわからない謎の情緒がwww
しかもその脇で、ただただ呆然とするだけの“鬼ごっこに使われた家の家族たち”がじわじわ来ますw
状況は地獄なのに、テンポと絵面があまりにポップで、気づけば笑いと恐怖がセットで押し寄せてくるという、本当に稀有な映画体験でした。
そして叔母はというと、紛れもなくR18認定の無惨な最後を迎えます(子役たち、大丈夫?)
6、唯一無二のホラー映画、誕生
叔母が築いてきた支配のロジックが、最後の最後でブーメランのように返ってくる。
その“世界が反転する一瞬”を、映像の勢いと狂気で一気に描き切るのがザック・クレッガー監督の真骨頂だと思いました。
ザック・クレッガーは『バーバリアン』でもそうでしたが、“怖い場面をあえて明るい動きで見せる”という反転ホラーが本当に上手い人で、今回もそのクセが炸裂。
『ウェポンズ』はまさに、その“狂気の陽性ホラー”をさらに推し進めたような1作でした。
正統派ホラーを期待すると肩透かしするかもですが、映像表現としてはめちゃくちゃ挑戦的で、1度見たら忘れられないインパクトがあります。
私個人としては、この振り切り方こそ映画の醍醐味だと思うので、気になった方はぜひ、自分の目で確かめてみてください。
アカデミー賞、ノミネートされないかな…。
