
タイムリープ映画かと思いきや、描かれるのは愛と死生観の物語。『ファーストキス』は、離婚寸前の夫婦が“人生をやり直す”チャンスを得て、ふたりの15年間をもう1度駆け抜ける感動作。手紙に綴られた「寂しさの正体」に涙しつつも、前半のコメディ演出や恋愛描写にはちょっとモヤモヤ…。さらには、松村北斗の“フツメン役・職人説”や松たか子のCGエピソードなども。
作品データ
【製作年度】2025年
【製作国】日本
【上映時間】124分
【監督】塚原あゆ子
【キャスト】松たか子、松村北斗 ほか
あらすじ
結婚して15年になる夫を事故で亡くした硯カンナ。夫の駈とはずっと前から倦怠期が続いており、不仲なままだった。第二の人生を歩もうとしていた矢先、タイムトラベルする手段を得たカンナは過去に戻り、自分と出会う直前の駈と再会。やはり駈のことが好きだったと気づき、もう一度恋に落ちたカンナは、15年後に起こる事故から彼を救うことを決意する。(映画.comより)
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レビュー ( 2025・07・28 )
1、タイムリープを楽しむ作品ではない
コメディパートはあまりノレなかったが…笑
『ラストマイル』が大ヒットの塚原あゆ子監督 × もはや”間違いない”坂元裕二脚本ということで、公開時からとても評判の良かった本作。
坂元裕二脚本の『怪物』と『片思い世界』は劇場へ行ったものの、本作はなんとなく劇場を見送り?配信にて鑑賞。
長らく倦怠期が続き、離婚する予定だった夫婦。離婚届を出そうとしたまさに当日、夫(松村北斗)が事故で亡くなってしまう。ひょんなことから過去へとタイムリープした妻のカンナ(松たか子)は、結婚前の夫と出会い、なんとか事故を防ごうとするが…といったストーリー。
タイムリープものということは知っていたものの、ジャケットの雰囲気からゴリゴリの恋愛映画だと思っていたので、こんなにコメディ色が強いとは思いませんでした。
…と、ともに、コメディがあまり得意でない自分からすると、前半のドタバタ劇にはあまりノレず…。タイムリープを繰り返すくだりも、正直ちょっと長いなぁ…と。
それでもこのテイストだからこそ、ハードなテーマを扱っているわりに重くならずに見れたのはあります。
ラスト40分で、物語はようやく”核心”へ。
ラスト40分ほどになり、夫の駈(※以下カケル)が、”自身が15年後に亡くなる”という事実を知るところから、物語はようやく新たな展開を見せ、本質へと迫っていきます。
タイムリープの整合性や、さまざまな考察がされてもいますが、この作品の主題は“タイムリープ“ではないように思います。
それよりも、人生をやり直すこと、もう1度大切に生きることを描いた「生き方」の物語なのだと—。
設定が似ている『知ってるワイフ(18)』

本作を知ったときに、生死は関わっていないものの、韓国ドラマ『知ってるワイフ』に似ているなぁと。日本でも、大倉忠義 × 広瀬アリスでリメイクされました。
2、テーマは、死生観と愛情の本質
カンナとカケルは結婚して15年後、残念ながら離婚を迎えてしまった――その当日に、カケルは駅のホームで命を落とします。
15年前にタイムリープし、カンナがカケルに伝えたのは、なかなかハードな内容でした。
「私たちは将来結婚するけど、不仲になって離婚し、あなたは死んでしまう…」なんて告白、普通なら受け止めきれないですよね…。
しかし、これだけのことを知らされたカケルは、こう答えます。
「…生きるとか死ぬより大切なことがある。やり直したいと思うとしたら、それは、君と過ごした15年間をやり直したい。死んでもいいから…」
このセリフに、物語のすべてが集約されています。
人って、うまくいくと思っている物事には、努力をしなくなる…。
未来を知り、自分の命に限りがあると分かったからこそ、努力する15年。
まさに、死生観と愛情の本質を描いた作品とも言えます。恋愛でも結婚でも、“スタート地点ではみんな希望に満ちている”けれど、その希望がある種の“油断”にもなるんですよね。
「ファーストキス」が意味するもの
カケルがカンナに再びプロポーズし、教会で誓いのキスしようとすると…「もう何年もそういうのしてないから…笑」と、やんわり拒否するカンナ。
すると、カケルはこう返します。
「いや、俺は“初めて”なんで…笑」
冗談のようなセリフにも聞こえますが、それは15年後の未来を知った上で、“最初から愛をやり直す決意”=命をかけたリスタートそのものを意味してるようにも思いました。
こうなると「ファーストキス」という言葉は、単なるロマンチックな響きだけではなくなりますね…。
※ここから先はネタバレします。
未見の方は、こちらから鑑賞できます◎
記事の最後にまとめてあります
3、”2度目の結婚”は幸せだった
未来を知っているのは、今度はカケルの方
15年前にタイムスリップしたカンナが、若きカケルにすべてを告げたことで、人生のバトンがひとつ渡されます。
2度目の結婚は、1度目とは違います(双方にとっては1度目なのでややこしいですが)。
未来を知っているのはカンナではなく、カケルの方になったのです。
カケルは「この先、自分が死ぬこと」も「結婚生活が1度は破綻すること」も全部わかっています。
…立場の逆転は、本作におけるいちばん心を打つ仕掛けでした。
死を知っているからこそ、命を注ぐ日常へ
未来を知ったカケルが目指したのは夫婦にとって「最善の関係を築く」こと。
それは“運命を変える”というよりも「最期まで、愛する人と一緒にいたい」という、ある種の祈りのようなものだったのだと思います。
結婚生活が上手くいくよう努力し、カンナの想いを受け止め続ける…。
何も知らないカンナは、ただただ“この人と過ごす心地いい毎日”を送る。
―それは、「一度失ってしまった関係を、やり直しているからこそ尊い」ものとして描かれているんですよね。
カケルが過ごした15年は、とても愛に満ちた日々だったはずです。
「寂しさの正体」は、好きの証
作中で特に心に残ったのは、ひとり残されたカンナに宛てた、カケルが遺した手紙の一文。
「寂しさは、寂しさから始まるんじゃなくて、それは好きという想いから始まる。好きになったことが、寂しさの正体」
愛する人を失った悲しみは、ただの喪失感ではなく、深く好きになったからこそ生まれる寂しさだとカケルは伝えています。
もし最初から相手を好きでなければ、失ったところでこんなに苦しくはならない。でも、心から大切だと思ったからこそ、別れの痛みは強く、寂しさも深くなる。
カケルはその気持ちを先回りして言葉にすることで、「あなたの悲しみは、愛の証だから後悔しないで」と。
映画全体を通して、タイムトラベルや運命よりも強く印象に残ったのは、こういう“日常の奇跡”を慈しむ感情だったと思います。
4、それは“運命”だったのか?
ホームでの“落ち方”に違和感?
物語の冒頭、電車のホームからカケルが転落する衝撃的なシーン。
自分がここで命を落とすことは分かっているので、おそらくベビーカーが落ちることを回避し、代わりに自身が落ちたものと思われます(これにも諸説ありますよね)。
それならば、ただタイミングが間に合わずに轢かれただけ…?とも思うのですが、それにしてはやや勢いがつきすぎというか…ネットでは「突き落とされたのでは?」という見方もチラホラあるんですよね。
実際に2度目に注目して見ると、ホームにいる男性が両手を広げているようにも見えるんです…。助けようとして手を出したのか、それとも─?
この「突き落とされた説」は一見、トンデモ理論にも思えますが、もしこれが本当だとすると、さらにこんなテーマも浮上します。
カケルの死は“回避できない未来”だった?
未来から来たカンナの言葉で、自分がいつ・どうやって死ぬのかを知ってしまったカケル。
にもかかわらず、最終的には“同じ場所で、同じように死んでしまう”という展開に、ある種の虚しさを覚えた人もいたのではないでしょうか。
「未来を変えるために努力する」と言っていたのに、結局は死んでしまう…。けれど、これってつまり、
人は“死”という運命からは逃れられない。でも“どう生きるか”は、自分で選べる。
という静かな“運命論”が、作品の根底にあるのかもしれません。
この作品は、未来を変える物語ではなく、“未来を受け入れる物語”なのだと思います。
悲しい結末ではありますが、“そういう矛盾も人生そのもの”ということが言いたかったのかもしれませんね。
5、納得いかないところも…
カンナはタイムリープし、”恋に落ちた”…?
本作のあらすじを見ても「タイムリープし、もう1度恋に落ちたカンナは…」とあるのですが、正直どこで恋に落ちたのかよく分かりませんでした…笑
このあたりの描写はコメディ色が強く、なんとなくうやむやに”そうなっていた”ような描かれ方だったので、「やはり夫でなければダメだった」という、もっと決定的なシーンが欲しかったです。これがあれば個人的にはもっと入り込めました。
なので、離婚するほど冷めていたはずのカケルに対し『私を置いて死んだくせに…』って、え?そんなに好きだったの?そんな描写なかったはずだけど…と、違和感。
やはり、恋愛描写が足りない?
上記の逆ですが、カケルはカンナと知り合って数時間後には、”自身の未来”を聞かされます。目の前の女性が”未来の妻”ということを知り、彼なりにいろんな感情があったでしょうが…。
さすがに、カンナと出会って数時間で「君と結婚できるなら、結婚も、死ぬことも間違っていない」とまで言わしめるには、もう〜少しだけ!カンナに惹かれる描写が欲しかった。
やっぱり、全体的に恋愛描写の不足があったのかなぁと。
個人的には、この作品ならそれこそ3時間あっても良かったです(・ω・)
私からしたら「設定100点、前半60点、後半95点、ラスト120点」みたいな作品だったので、すごくもったいなかったです…。
そういう質問、どうなの…?
カンナが、結婚前のカケルに対し『目の前にいる困っている他人と、家族。どっちが大事?』という、数回出てくる、これ。
命をかけて人を助けて亡くなった人間に、このタイミングでする質問なの…?
というより、こんなことをわざわざ聞かなくても、家族の方が大事ってわからないか?と。
よくある『自分と◯◯が同時に海で溺れていたら、どっち助ける?』みたいな質問と似てますが、若い人ならともかく、40過ぎの女性がする質問ではないような気が(・ω・)
しかも前述したように、カンナがカケルをそこまで好きだったという説得力ある描写がないため、この質問にはかなり萎えました…。
カケルだけが努力する理不尽さ?
…劇中では、離婚原因はほぼカケルにあるような描かれ方をされていたのですが…。カンナにはなんの原因もなかったのでしょうか。
確かに夫婦の仲は、カンナの歩み寄りに応えようとしない、カケル側が壁を作っているようには見えました。
実際、”2度目の結婚生活”は彼の心づもりにより夫婦関係が上手くいったところを見ると、やはり主な原因は夫にあったのでしょうが。そう思ったら、カケル自身の成長物語としても見ることができます…。
ただ、まだ「運命の人(若いカンナ)」にすら出会っていないカケルが、未来の妻に『うちら結婚するけど、その後離婚してあなたは15年後に死ぬの』と告げられるだけでも、相当なハードモードなのに。
まだ起きてもいない未来のために、自分(カケル)だけが?努力をするって、かなり理不尽な気がしないでも…笑
6、松村北斗の“フツメン役”職人説
イケメンであることを封印する才能がエグい
初めて松村北斗関連の作品を見たのは『すずめの戸締まり』だったのですが、とても良い声なので普通に声優さんだと思ったんですよね。
そして『夜明けのすべて』でもそうでしたが、イケメンオーラを一切振りかざさずに、“どこにでもいる人”として溶け込めるのが、本当〜に!凄すぎます。
泣かせにいってる感を出さずに“ふつうの男”として演じきれる。正直、アイドル出身とは思えないほど…。
- 表情も繊細
- 声もどこか優しい
- 感情の出し方がギラついてない
これが「普通の人」や「等身大の旦那」役にピッタリなんですよね。わざとちょっと言い淀むような話し方や、手紙のシーンなんて、あそこだけ見ても泣くやつ。
坂元裕二や是枝裕和あたりの作品に出演し続けて「静かに日本映画界を支える実力派」ポジに完全シフトしてほしいまであります。笑
松村北斗の44歳設定の姿は、白髪やシワ、お腹の肉感までメイクと衣装で作り込み、声や演技は本人そのままという完全アナログ仕様だったんだそう。
松たか子の完璧な”若返り演出”がすごい!
松村北斗のアナログメイクに対し、本作で話題になったのが松たか子の“若返りCG”。
29歳のカンナとして登場するシーンでは、デジタル補正で肌や輪郭が若返っているそうですが、違和感がほとんどなくてびっくりしました。
私の世代だと未だにやっぱり『ロングバケーション』なのですが(笑)まさにあの当時の松たか子でした!結婚式のシーンは本当に可愛かったです。
VFX技術による『ディエイジング(若返りCG)』は単なる画像処理ではなく、俳優の表情や質感を損なわずに若返らせるための高度な技術が求められます。膨大なショットごとに細かな修正が加えられ、気の遠くなるような作業を経て完成に至る。(サイゾーオンラインより)
- 過去のドラマや映画映像から若い頃の顔を摘出し、現在の撮影映像に 顔の輪郭・肌質・表情の質感 をCGで再現して合成。
- ハリウッドでも『ベンジャミン・バトン』や『X-MEN』で使われた技術で、日本映画でも高度な若返り演出が登場しているんだそう。
こちらも、”フツメン役”の松村北斗の職人っぷりが炸裂!
坂元裕二・脚本作品2作品!


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