
本作を見た率直な感想は「変わった作品だなぁ…」と。同じく坂元裕二脚本の『花束〜』や『怪物』などと比べると対象年齢は低めで、”児童文学のベストセラー”のようなテイスト。多くのジャンルが詰め込まれており、見る前のイメージとは違う方も多そうです。一方で、本作には“ある事件”や“犯人”の存在が大きく関わっており、実話との関連性が気になる内容にも。気まずいシーンなどもないので、家族みんなで見られる健全で清い作品とは言えます。笑
作品データ
【製作年度】2025年
【製作国】日本
【上映時間】126分
【監督】土井裕泰
【キャスト】広瀬すず、杉咲花
清原伽耶、横浜流星 ほか
あらすじ
古い一軒家に暮らす美咲、優花、さくら。家族でも同級生でもない3人だったが、一緒に楽しく気ままな日々を過ごして、もう12年になる。強い絆で結ばれた3人は、それぞれに届きそうで届かない“片思い”を抱えていたのだったが…。(allcinemaより)
年齢制限は?
年齢制限はないので、どなたもご覧になれます。気まずいシーンなどもありません。
どこで見れる?
レビュー・考察【ネタバレあり】
1、実話がモデル?事件の真相と犯人
本作『片思い世界』は、過去に起きた無差別殺傷事件によって命を落とした3人の少女たちの物語です。
- 3人はすでに“幽霊”として存在している
- さくらが会いたい相手は、事件の「犯人」
- モデルとなる実在事件はなく、フィクション
本記事では、事件の内容や犯人の意味、そして「片思い」というタイトルに込められた本当の意図を整理していきます。
また、無差別殺傷事件についてですが、結論から言うと、特定の実在事件をモデルにした作品ではありません。
学校内での事件という設定から、現実の事件を連想する人も多いですが、あくまでフィクションとして描かれています。
新しい”幽霊”の概念

(C)2025「片思い世界」製作委員会
- ご飯も食べるし、トイレも行くし、身じたくもする。(3人のファッションもさりげなく同系色でコーディネート)
- 毎日、決まった時間に学校や仕事にも行く。
- 身体は成長するので、家の柱で成長記録。
- 同じ空間の別次元に(?)いる。
- こちらから何かに触れることは出来ないが、相手が自分とぶつかりそうになると自分は飛ばされる(ただ、人間以外のものには触れられることも出来たりと?その定義はよく分からず…)
- 周りからは見えていないというだけ。
なかでも、身体だけは成長するというのは初めて見ました。笑
2、無差別殺傷事件の被害者だった
物語が始まると、わりとすぐ違和感を感じるんですよね。キレイすぎるというか…なんだか現実味がないことに。
鑑賞前にネタバレ系だということは耳にしていたので、「3人が死んでいる」か「3人が実は1人の人格」なのかな…?と思っていたら、前者でした。
また、『片思い世界』というタイトルから、見る者は恋愛映画だと思うはずー。しかし、本作は恋愛メインのキラキラ映画などではないのです。
それが、冒頭でも述べた彼女たちが”幽霊”となった理由…。
彼女たちは、12年前に学校で起きた「無差別殺傷事件の被害者」だったのです。合唱クラブに属していた3人は逃げ遅れ、命を落とすこととなります(事件そのものの描写はありません)
未見の方は、こちらから視聴できます◎
3、「片思い」の相手はまさかの犯人

タイトルにもなっている『片思い世界』。
恋愛映画ならばたいてい「片”想”い」が一般的なのに「片”思”い」?とは思ったんですよね。
そして、これが物語に大きく絡んできます。序盤で彼女たちが幽霊であることが判明し、一体ここから何が起きるのかというと…。
美咲(広瀬すず)は、同じ合唱クラブの典真に恋していました。
優花(杉咲花)は、大好きな母親のことを思っていました。
それぞれが「思っている」人物に会いたいと願います。
しかし、さくらが会いたい相手は、他の2人とは決定的に違います。それは、彼女の人生を奪った「事件の犯人」だったのです。
これには一瞬ゾッとしてしまいましたが、会いたいには違いありません。確かに、自分がこうなった原因を作った人物に会いたいと思うのは、分からないでもないですが…。
彼女の“片思い”は、「加害者への感情」を描いたものだったのです。
美咲、優花、さくらと、花に関連する名前が付いています。優花の母も花屋さんで働いていました。
4、キャラ描写の違和感

本作では、3人のキャラクターがそれぞれ異なる“役割”として描かれているようにも見えます。そのため、物語としては分かりやすい一方で、キャラクターそのものの深みがやや弱く感じられる場面もありました。
え〜、ここからはほぼマイナスな感想になってしまうので、本作が大好きな方は引き返してください…w
3人それぞれに会いたい人物がいるのは良いのですが…。
実は彼女らにはこれ以外のエピソードはほぼ出て来ず、キャラクターのバックボーンの掘り下げが甘いようにも感じました。
美咲
片想いの典真のこと以外の情報はあまり出てきません。家庭が貧しかったらしく、いつもお腹を空かせていた。彼女のお腹が鳴る音を聞いて、典真はコンビニへ肉まんを買いに行き、”事件”から逃れることとなります。
優花
母親との絆など、3人のなかでは最も家族背景が分かるキャラクター。
さくら
最も不思議なのが彼女…。家族やその他の情報がなく、素性がほぼ分からず。会いたいのは犯人だけって…そんなことある!?笑 その理由も、週刊誌に”犯人が出所”の記事を見たシーンしか描かれておらず。なんと言っても、自身を殺害した犯人に会いたいのですから、もう少し説得力のある理由付けが欲しかった。
典真
事件をずっと引きずり、才能があったピアノもやめてしまう。これは分かるとしても、事件後12年間も美咲のことを想い続けるには、ちょっとエピソードが少なすぎる…(!)
なんだか、
恋愛パート=美咲
家族パート=優花
犯人関連?=さくら
のような短絡的な描き方が気になってしまいました。
それぞれあと数分足してでも、彼らのバックボーンに関するエピソードが欲しかった!せめて、幼少期のエピソードは欲しかったところ。
これだけでも、感情移入の仕方がまったく違ったと思うので…。
『流浪の月』では広瀬すずの恋人を演じていた横浜流星。これまた本作とは真逆のとんでもないDV野郎だったので(笑)本作では結ばれて欲しかった…という個人的感想。
5、突然のSF要素に期待するも…

優花は大学で素粒子理論を学んでいるのですが、その理論でいうと「人間は素粒子でできているから、発見してもらえたら、元の世界に戻れるのでは…!?」と。
また3人はラジオ番組を聴くことが日課となっていたのですが、なんとこのラジオパーソナリティは元・死んだ人間で、現在は生き返り元の世界に戻ってこられたというのです(!)
”亡くなっている誰か”へ向けて放送を続けており「元の世界へ戻るには、自身が思っている人物と心を通わせる必要がある。そして特定の日に、ある灯台へ行けば元の世界へ戻れる…」と。
何やら唐突に出てきたSF要素に若干の不安を抱えつつも、3人が元の世界に戻れるのならこれはこれで感動しそうだし、いっか(笑)?なんて思っていたのですが…。
エンドロールで松田龍平の名前が出てきたので、どこに?と思ったら…パーソナリティの声が松田龍平だったようです。いつものダラっと感がなくまったく分かりませんでした!笑。てっきり中村倫也あたりかと。
6、演出ですべてが台無しに…
本作は、設定やストーリーは決して悪かったとは思いません。ピントさえ合うべきところでしっかりと合っていれば、私も確実に楽しめたと思うんですよね。
本作で最も気になったのは、間違いなく「演出」です。正直に言ってしまうと、ここが全てを左右していると感じました。
商業映画の邦画は「分かりやすさ」を重視して、映画としての自然さを欠いてしまうことも多いですが、本作も例に漏れずで…。
奇しくも、横浜流星が出演している『正体』でも同じようなことを言っています…笑
説明ゼリフや”劇”っぽさ
例えば、学校で彼女たちの慰霊碑を娘に説明する父親のシーン。
これがあまりに説明セリフで、『しっかり暗記してきたんだな』という俳優のことまでもがチラつき始めると少しずつ冷めていく自分が…。
そして、”説明”を聞いていた3人が、父親のセリフを真似して3人で一句ずつリピート。うーん、劇っぽい…。
設定上、コントっぽくなってしまう
設定上こうなるのは仕方ないのですが、生きている人間には自分たちのことは見えていないので、3人が現場に居合わせているような状況が生まれるわけです。
となると、相手に一方的に話しかけたり、相槌を打ったりというシーンが出てきます。適度ならば良いのですが、こちらの感情を過度に誘導しそうなところもあったりで…。
特に、ラスト。
美咲は、亡くなる直前に音楽劇のシナリオを書き上げていました。
典真がそれを発見し、典真と美咲が交互に”読み合わせ”をするシーンには、タイミングやその長尺っぷりに、いやいやいや…wとなってしまい…。
最も泣けるシーンだったはずなのに、まさに劇っぽさに涙が引っ込んでしまいました…。
美咲が書いた劇のシナリオというのが、あの年齢の少女が書いたものとは思えないクオリティにビックリ!笑。あんな人名、どうやって出てくるの…。
ステレオタイプが過ぎる
さくら同様、事件の加害者に会いたいと思った人物が…。
優花の母親(西田尚美)でした。
優花の母親が犯人と対峙する、物語でもかなり重要なシーン。もちろん”現場”には、優花を含め、美咲とさくらもいます。
実は、優花が亡くなったあとに再婚し娘をもうけていた母。自分への愛情はもうないのかもしれないと不安になっていましたが、母が犯人にぶつける思いから、愛情を確認する優花。
”聞こえない”母親の横で相槌を打ったりします。ここまでは感動的で良かったんです。
しかし、犯人のまるで反省していない態度に業を煮やした優花の母が、なんとナイフを持ち出し犯人を襲おうと(!)
しかも形勢は逆転し、犯人に襲われてしまう母!
このとき、優花の母と犯人が車内に。3人は外に…。なので、なんとか母を助けようと、ボンネットに乗ってガラスを割ろうとしたり車を蹴ったり…。(もちろん物理攻撃はできません)
犯人像にしても、こすられまくったような既視感バリバリなキャラクター。
優花の母が『…娘を返して!』とあまりにステレオタイプなセリフを吐き、小道具のようなナイフを取り出すって…(;ω;)
娘を亡くした母の怒りを表すのに、こんな演出しかなかったのでしょうか…??
言っておきますが、演じている俳優たちは皆、演技は上手いんです……上手いはずなんです!笑
ただ、これもあるあるなのですが、キャラクターの行動やセリフがひどいと演技までひどく見えてくるという…。
7、詰め込みすぎでテーマが迷走
結局、3人はどうなったのかー。
ラジオパーソナリティの話を信じ、灯台へ行って「飛べー!!」と掛け声をかけるのですが、あえなく失敗。
結果的には残念でしたが、これはこれで微笑ましく、3人は現状を受け入れこのまま”ここ”で生活していくのです。
そして、事件前に出場することが出来なかった合唱コンクールに(勝手に)参加し、気持ち的にも晴れやかな気持ちになった3人。
物語の落としどころとしてはこれで良かったと思います。
ただ考えてみると、恋愛、家族ドラマ、サスペンス、SF、ファンタジーと、かなりのジャンルを詰め込んでいるんですよね。
”生の世界に戻れるかもしれない設定”は要らなかったのでは…という気がしないでも。
多くの要素を入れたことにより、この物語が最も言いたいことは何なのか?という重要なところがぼやけて、散漫になってしまった印象も受けました。
そもそも、本作のターゲット層がよく分からないのですが…。近年の『花束みたいな恋をした』や『怪物』などと比べると年齢層はかなり低めかと。
なんだか児童文学っぽいというか…児童文学の傑作!という触れ込みならば、至極納得です笑。ポプラ社からこんなお話出ていそうじゃないですか(今もあるんですかね?)
カンヌ映画祭でも話題となった、是枝裕和監督のミステリー!
タイムリープ映画ではあるけれど、テーマはそこではない…!?
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